なぜ認知症はみんなにわかってもらえないのか

若年性認知症を知るセミナーに、参加しました。
(写真は、国立長寿医療センターの鷲見幸彦先生の講演の様子)
このセミナーは、認知症介護研究・研修大府センターが開催したもの。
大府センターは、厚生労働省から「若年性認知症」の研究施設に指定され、先月から若年性認知症専用の無料電話相談も行っています。
セミナーでは、最初に、国立長寿医療センター外来診療部長の鷲見幸彦先生から、「若年性認知症の医学的理解」と題した講演がありました。
講演の中で一番印象に残ったのが、「なぜ認知症はみんなにわかってもらえないのだろうか」という話。
認知症は、もの忘れのほかに、実行・遂行障害が起こってきます。
実行・遂行障害とは、ものごとを計画をたてて適切に行うことが難しくなることをいいます。
たとえば、
1. 買い物ができない
2. 料理ができない
3. 入浴ができない
4. 小銭がうまく使えない
5. どこへ行くかはわかるが、どのようにしていくかがわからない
買い物や料理は、計画→実行 という手順が複雑で、認知症になるといろいろ支障がおきてきます。
入浴はちょっと意外だったのですが、風呂に入って、どういう順序で体や頭を洗うかは、けっこう複雑な手順のようで、最初は頭が洗えないなどという形で、表れるようです。
(認知症の人が入浴拒否を行うという話はよく聞きますが、鷲見先生によると、入浴ができないということから、拒否につながるのではないかというお話でした)
で、なぜ認知症はみんなにわかってもらいにくいのかというと
能力の落差が激しく、できることとできないことが傍目で見ていて理解しにくいという説明でした。
認知症になっても 、これまで学習・勉強してきたことの記憶は残り、言語の能力も落ちません。
たとえば、15分前のことを忘れるほど物忘れが激しいのに、非常に難しい外国語の論文を読めたりもするそうです。
わたしたちは、通常、これができれば同程度のことはできるはずと判断するため、その落差が理解しにくいのです。
また言語能力は衰えないので、普通に会話をしている分には、認知症だとはなかなか気づかれないことは多いそうです。
しかも、やっかいなのは
認知症の症状は、より身近な人に対して一番強くでる。
という特徴とか。
認知症の症状の出方は、相手によって変わります。
ですから、親しい家族や、普段めんどうをみてもらっている家族には、認知症の症状が強くでるのに、他人に対しては症状がでにくいのです。
離れて暮らしている家族が、「認知症だとは思えない」と主張することが多いのは、そのため。
逆にいえば、
だからこそ、家族だけでなく、他人と接した方がいい! のです。
「他人と接する方が、認知症の症状がおさえられ、本人が能力を発揮する。だから、家に閉じこもって家族とだけ過ごしていてはよくない。デイサービスなどを利用する方がいい効果を生む」と、鷲見先生は強調していました。
「認知症は医療だけではどうにもなりません。介護の専門家だけでなく、地域の力も必要です。みんなで連携して支えていきましょう」
という結びの言葉が、心に響きました。
その後、若年性認知症の企業での実態と支援や、医療現場における就労支援、若年性認知症デイケアの試みなどの報告がありました。
50代での再就職が一般に非常に厳しい今、若年性認知症の方が退職して、新たに再就職先を見つけることは困難です。
障害者の授産施設などで働くという選択肢もないわけではありませんが、賃金は月に1〜2万円。
障害者年金と併せても、月10万円がせいぜいという話でした。
働き盛りで、住宅ローンが残っていたり、子どもの養育費がかかるような場合は、経済的には仕事を辞めないという選択しかできないこともあるのだと実感しました。
職場での支援は、精神障がいに対する支援制度を使うことになるため、若年性認知症と診断されたら、精神障害者保健福祉手帳を申請することが重要だという話でした。
若年性認知症への支援体制は、まだ十分に整っていません。
わたしたちも、「若くても認知症になる」ということをきちんと理解し、地域で支えていけるように考えていかなくてはと思います。
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