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末期がん患者の「家で死にたい」という願いをかなえる〜緩和ケア支援診療所

先日、岐阜市で行われた「日本在宅ホスピス協会」の全国大会。
そこで、がん患者を家で看取る在宅ケアを先駆的に行ってきた、東京の「グループ・パリアン」に出会いました。

独居で家族の支援がまったく受けられない人も、ボランティアと医療・看護・介護が一体となって、その人らしい在宅での生活を支援する。そのすごさは、「パリアンだから、できた」、「パリアンじゃなきゃ、無理だよね」という声からも推察できました。

末期がんの患者を在宅で看取る。
そんなことができる医師(病院)は、さばくの砂に埋まった砂金のように、ほんの限られたスーパースターだけ。
残念ながら、いまの日本の在宅緩和ケアは、そういう状態です。

こうした状態を変えるためには、何が必要か。
パリアンの理事長である川越厚医師が、キャリアブレインのインタビューに答えた記事を見つけたので、以下に転載します。

-----------------------(ここから引用です)---------------------

「絶対うまくいく」緩和ケア支援診療所の全国展開を

【第70回】川越厚さん(医療法人社団パリアン理事長、クリニック川越院長)

 国民の3割ががんで亡くなる時代。「もう治らない」と宣告された患者は、どこで死を迎えたいと望むのだろう。「自宅」と答えた時、それは果たして可能なのだろうか―。
 自らが院長を務める無床診療所「ホームクリニック川越」(当時)を中心に、訪問看護や療養通所介護などのチームと連携して地域の末期がん患者への在宅ケアを支援する「グループ・パリアン」(同)を2000年に設立した川越厚さんは、現在の在宅医療体制では末期がん患者の「家で死にたい」という願いをかなえられないと指摘する。
 なぜ末期がん患者に対する在宅医療は進まないのか。今求められることは何か―。日本の末期がん患者への在宅医療に、その創成期からかかわり、現在も第一線で活躍する川越さんに話を聞いた。

■在宅医療を推進する施策はなぜ実を結ばない?

―初めに、末期がん患者に対する日本の在宅医療について、これまでの歩みをどのようにとらえますか。

 わたしが末期がん患者に対して、死への不安の解消や痛みの緩和など総合的なケアを行うホスピス医を始めた20年前のことを思うと、今は夢みたいな状況になったと思います。何が変わったかというと、たくさんありますが、例えば麻薬を使うということは当時大変難しかったです。1989年のMSコンチンの処方剤の発売から始まって、最近はフェンタニルパッチの発売、モルヒネの使用の緩和などが行われ、提供できる医療は非常に変化したと思います。
 また、92年には医療法の一部改正があり、在宅が第3の医療の場として登場しました。このほか、患者や家族の生活の質(QOL)にとって最適であり、また医療経済的に最もコストが低いとの認識から、国はこれまで在宅医療の普及に向けての法整備を進めてきました。
 ただ1つ変わっていないのは、今なお医療者自体が病院中心に医療を組み立て、考えているということです。在宅の実情を知らない人によって在宅が語られている現状があることは、昔も今も同じだと言えると思います。

―実情を知らない人によって在宅が語られているとは、どのようなことですか。

 例えば、がん対策の総合的・計画的な推進を目的として2006年に作られた「がん対策基本法」があります。基本的な考えの1つに、がん患者の在宅医療の推進がありますが、実はこれがうまくいっていない。具体的に計画し始めた時、在宅医療を知らない人が推進を考えてしまったためです。制度を実施するに当たり、従来の病院指導の在宅医療推進から脱却できていない状況があります。
 がん対策基本法には、主に3つのポイントがあります。1つ目は、どういう先生がいるか、薬局がどこにあるかなどについての情報のネットワーク化。ただ、末期がんの患者を在宅で診たいという診療所はせいぜい5%しかありません。2つ目は、病院から患者が戻る場合の手順などを示したパスです。3つ目はコンサルテーション。専門家がいますから、何かあったら相談してくださいというようなものです。
 よくできているじゃないかと。だけど僕らのように現実に在宅ホスピスケアをやっている人間から言うと、実現性はありません。

―具体的にどのようなことでしょうか。

 例えば、ネットワーク化という視点では、ネットワークに含まれる診療所の専門性のなさが指摘できます。がん対策基本法では、地域の診療所の医療レベルを底上げしてがん患者の対応に当たろうとしていますが、先生方の知識を上げるといっても、緩和医療に関しては、医療の知識だけでは不十分です。すなわち、モルヒネや放射線治療について知識を身に付けるだけでは駄目です。死にゆく人を診る難しさは、患者さんやその家族が感じる不安をどう取るか、24時間ケアをどうするか、というところの方にあるのです。
 コンサルテーションするといっても、対応するのは在宅を知らない緩和ケア病棟の方や拠点病院のPCT(緩和ケアチーム)の方です。彼らのアドバイスは、「在宅では無理ですから、入院させてください」ですよ。

■エビデンスに基づく提案を

―では末期がん患者の在宅医療を推進するために今、何が必要なのでしょうか。

 末期がん患者の在宅医療を本当にやろうとする地域の診療所、PCC(緩和ケア支援診療所)を制度的に育てていくことが必要だと思います。今のように、「あなたは末期がん患者を診ますか? はい、診ます」「何例までできますか? 1、2例まで」といったリストから集めた診療所の情報でネットワーク化を進めても、そこの先生では経験がないのだから、最後まで診られないのが落ちです。結局救急車を呼んで、最後は入院です。
 さらに、以前は末期がんの患者さんを受け入れてくれる一般の病棟がありましたが、病床数の削減を掲げる国の方針もあり、そうした病棟はどんどん閉鎖する流れにあります。そうした患者さんにERで対応している現状もあります。そんなおかしなことってないですよね。地域医療の破壊につながる可能性があります。
 だから、専門的に末期がん患者の医療を行う診療所を地域ごとに育てていかなくてはいけません。また、「ネットワークができたらいいよ」ではなく、実際に数字を出さなければいけないのです。

―数字を出すとは?

 例えば墨田区だったら、わたしのところのような診療所が1つあれば、末期がん患者さんの在宅死率は、この10年間で約6%のところが約13%になりました。1か所できただけで、これだけの違いが出ます。岩手県北上市はもっとすごい。人口はそれほど多くはありませんが、15年くらいの経過の中で、6%から24.5%になっています。
 実績としての数字を出さずに、ネットワークのみを新たにつくり、提示して、「これやってみてね」っていう時代ではもはやありません。

―つまり、机上の空論ではなく、根拠のある提案をということですね。
 はい。わたしはネットワークをつくる際の要となる診療所(PCC)の全国展開を提案していますが、これは間違いなく、自信を持ってうまくいくと言えます。わたしが実践してきたことであり、その経験を通じての発言だからです。

■在宅医療を運営する上で必要なこととは?

―先生は昨年、在宅診療推進のために行った研究の成果を厚生労働省に報告されましたね。

 はい。在宅医療をスムーズに行うために何が必要なのかという視点から、05年から3年間かけて、「在宅療養者の看取りにおける訪問看護師と医師との連携に関する研究」と題する報告書を提出しました。要点は大きく3つあります。
 1つ目は、在宅医療は専門性を要求される分野であるということ。わたしが末期がん患者の在宅医療推進に当たってPCCという専門の診療所を構想するのも、そうした理由があるからです。
 2つ目は、チームで取り組まなければいけないということ。実際に医行為にかかわる医師と看護師のほか、薬剤師や介護士との協力体制を持つべきです。
 3つ目は、そのチームをつなぐ、きずなとしての「約束指示」です。約束指示は、パスという言葉で置き換えても構いませんが、皆さんはどうも、パスが1つあればそれにのっとってやればよいと理解している節があると思います。しかし、わたしはそのようには考えていません。

―それはどのようなことですか。

 今、厚労省とか日本で全部やっているのは、1つのパスを地域でやったら、それにのっとってやっていくっていうものですが、現場の医者は必ずしもそれに沿ってはやりません。むしろ、出来上がったものをまねるのではなく、医者が自分でつくらなければいけないと思います。必要な場合には、応用的なものが出てこなければいけないとも思っています。

―既に示されたものに型をはめるのではなく、医師自身が独自のパスをつくり、それをチーム内で共有することが必要ということですね。

■天命としてのホスピスケア

―最後に、先生が在宅でのケアにこだわる理由をお聞かせください。

 今、医者になって40年になります。半分をがん治療の専門医、半分をホスピス医としてやってきました。一方、医者としてだけではなく、患者としての視点に立った経験もしてきました。39歳の時に大腸がんになり、死ぬか生きるかをさまよいました。また、58歳の時には家内が白血病になり、家族の中に患者を抱えた経験もあります。そこから思うのは、人の死とは、生物学的な命の終わりだけではなく、社会的存在としての命の終わりだということ。病院で診ていた当時は決して気付かなかったことです。また、「家族の気持ちって、こんなに大変なのか」ということ。ホスピスケアとは、患者と家族で1人の病人だと考えるのが大原則です。
 なぜ在宅をやるのか。経験上、治療医がさじを投げて「駄目だ」って言ったときに、患者さんにとって一番いい場所は間違いなく家だと、わたしははっきり自信を持って言えるからです。その医療に携わり、進めていくということは、わたしの医者としてのベルーフ、天命だと思っています。
 後には引けない。そんなところですかね。

https://www.cabrain.net/news/article/newsId/23320.html
-----------------------(引用ここまでです)---------------------

川越先生は、大会の最後のあいさつで
「人はだれでも死ぬ」ということを受け入れないと、在宅緩和ケアはむずかしい」
という話をされていました。

医師も、患者も、家族も。
最後はだれもが死ぬ という現実を直視することから、始めなればいけないのかもしれません。

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