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2010年10月

認知症高齢者が狙われている

認知症になって、判断能力が弱った高齢者を狙う、詐欺事件が多発しています。

今日のNHKで放送された「クローズアップ現代 認知症詐欺〜衝撃の被害実態」では、予想以上に被害が拡大している状況が報道されていました。

------------------------(ここから引用です)----------------------
クローズアップ現代
2010年10月27日(水) 放送
http://cgi4.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail.cgi?content_id=2956

狙われる認知症高齢者
いま認知症などで判断力の落ちた高齢者が、悪質な業者から高額な商品を購入させられたり、未公開株などの購入代金をだまし取られたりする財産被害が急増している。
NHKは司法書士の団体と、高齢者の財産管理を行う後見人5000にアンケートを実施。
そこからは、詐欺グループだけでなく、社会的信用のある金融機関や、高齢者を見守る身近な人までが財産を狙う深刻な実態が浮かびあがった。
どうすれば被害を食い止めることができるのか、対策を考える。

■再放送時間変更のお知らせ〈BS2〉
24:20~24:46【28日(木)午前0:20~】
------------------------(引用ここまでです)----------------------

放送の中で、認知症高齢者を食い物にする、悪質業者の談話が流されていました。
高齢者を狙った振込詐欺をしていたグループが、認知症高齢者を狙うようになってきているとのことで、彼らに言わせれば「認知症の年寄りはおいしい」とか。
振込したことも忘れてしまうため、家に帰ったころを見計らって
「まだ振込されていませんよ。今から出かけて、すぐ振り込んでください」
というと、1日に何度も言われるままにお金を振り込んでしまうのだとか。
被害者は、半年という短期間に、何千万もの預金をすべて失ってしまうなど、高額な被害額に至ることもあるそうで、預金はおろか、持ち家までも失って、介護施設に行くはめになった方などが番組で取り上げられていました。

認知症高齢者を狙うのは、悪質業者ばかりではありません。
信託銀行や証券会社の営業が、リスクが高い外国の証券などを売りつけていたケースも紹介されていました。
また、信じて頼っていた家族や、近所の人などが、財産を奪うことも珍しくないようです。

こうした被害を防ぐためには、成年後見制度を利用して、認知症のお年寄りに第三者後見人をつけることが有効なのですが。
成年後見人の引き受け手がまだまだ少なく、必要な人がだれでも利用できるまでにはなっていません。

そこで、期待されているのが、市民のボランティアによる「市民後見人」。
明日、市民後見人の取り組みについて勉強するために、東京都世田谷区の成年後見センターに行ってきます。

明日は午前5時半に家を出る予定なので、今日のブログはここまでにしますね。

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有料老人ホームと高齢者向け賃貸住宅を一本化?!〜厚生労働省と国土交通省が関連法案提出へ

老後に高齢者が住み替える民間の住まいに、有料老人ホーム(介護付き、住宅型、自立型の3種類)と、高齢者専用賃貸住宅・高齢者優良賃貸住宅があります。
前者は、厚生労働省の管轄。
後者は、国土交通省の管轄として、分かれていましたが、内容的にはほぼ同じ。
なのに、設置基準などが違い、選ぶのにわかりにくいという実情がありました。
これを受けてか、両者を一本化し、基準や料金、サービス内容などの情報公開制度を義務づけるという動きが出てきました。

-------------------------(ここから引用です)-----------------------
「サービス付き住宅」に再編へ
=有料ホームと高齢者向け賃貸−厚労・国交省

 厚生労働、国土交通両省は17日、有料老人ホームと、高齢者の入居を拒まず、一定のサービスを備えたものもある高齢者向け賃貸住宅を、新たに「サービス付き高齢者住宅」として再編する方針を固めた。設備基準や料金・サービス内容に関する情報公開制度を設け、入居希望者の利便性を高める。来年の通常国会に関連法案を提出し、2012年度の次期介護保険制度改正に盛り込む。
 現在、有料老人ホームは厚労省所管の老人福祉法で、高齢者専用賃貸住宅(高専賃)など3種類ある高齢者賃貸住宅は両省共管の高齢者住まい法で、それぞれ設置基準などが規定されている。有料老人ホームは入居一時金により「利用権」を買い、入居後は介護などのサービスを受けられるタイプが中心。高専賃は賃借権方式で、1戸当たりの床面積は原則25平方メートル以上、家事などサービス内容はさまざまだ。ともに一定以上の収入・資産のある高齢者が入居者層の中心となっている。

(2010/10/17-15:39)
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201010/2010101700089

------------------------(引用ここまでです)-----------------------

どんな形で統合化するのか、情報公開の部分が一番気になります。
いずれにせよ、利用者の権利が守られるように、制度を作っていって欲しいと思っています。

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自分の最期は自分で決めるために〜事前指定書の学習会のお知らせ

もしも回復の見込みがなくなったら、最期の治療はどうしたいですか?
延命医療はして欲しくない、と希望した場合、その意思をどのように形にしたら、自分の意思を尊重した医療が受けられるのでしょうか。

延命をどこまで行うか。
医療の自己決定を尊重するために、事前指定書(Let Me Decide)を導入しようという試みが始まっています。
愛知県でも、LMD研究会が中心となって、定期的に勉強会が行われています。
来月、名古屋で第3回のLMD学習会がありますので、お知らせします。

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医療における自己決定 Let Me Decide!導入のために

LMD研究会が医療の事前指定書(Let Me Decideは、カナダ・マクマスター大学ウィリアム・モロイ老年科教授が開発したもの)を広める活動を始めてから、15年が経ちました。
しかし、まだまだLMDに関する認識が深まったとは言えません。

そこで第3回学習会は、より多くの方にも認識を深めていただくために、愛知県医療法人協会との協同で開催します。

LMDを日本に紹介された社会医療研究所所長の岡田玲一郎氏による基調講演、またホスピス、特別養護老人ホーム、在宅療養支援診療所、それぞれの立場から医療における自己決定の現状と課題についてお話しいただきます。

今回の学習会では、一般市民の方々が医療を受ける中で経験された辛い思いなどを、医療者にも知ってもらい、お互いに学び合い、患者・家族と医療者とのコミュニケーションを少しでも進める良い機会にしたいと思います。ぜひご参加下さい。

◆開催日/平成22年11月13日(土)
◆時間/ 12時45分〜16時40分
◆場所/ 愛知県医師会館 9階 大講堂
     (名古屋市中区栄4-14-28、地下鉄「栄」駅下車13番出口より南へ徒歩5分)
◆定員/ 100人(先着)
◆参加費/500円
◆申し込み/なかざわ記念クリニック内 LMD事務局 0563-54-5662

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東海から変える!市民と議会のチカラ〜11月27日に市民と議員の交流会議を開催します

首長の出す政策の追認機関になっている今の地方議会を変えて、住民が抱える問題を共有し、解決するための政策提言ができる議会にしよう!
そう願う市民と議員が集まり、交流する場として、11月27日に「市民と議員の条例づくり交流会議in東海」が開催されます。

テーマは
東海から変える!市民と議会のチカラ ~もっと使おう!議会を~

基本にたちかえり、議会とは何か? 市町村議会はなぜ必要なの? ということを問い直す基調講演と、参加者が意見交換を行う分科会が予定されています。

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▼市民と議員の条例づくり交流会議in東海「東海から変える!市民と議員のチカラ」
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  市民と議員の条例づくり交流会議in東海
  東海から変える!市民と議会のチカラ ~もっと使おう!議会を~

  日時:2010年11月27日(土) 13時~17時30分(交流会:18時~19時30分 )
  会場:刈谷市産業振興センター(愛知県刈谷市相生町1丁目1?6)
  参加費:議員 4,000円、市民 1,000円、学生 無料(ボランティア願い)
  交流会参加費:調整中
  主催:「東海から変える!市民と議会のチカラ」実行委員会 
      市民と議員の条例づくり交流会議、自治体議会改革フォーラム 
  後援:自治体学会
  連絡先:電  話 090-4776-5282(実行委員長:鷹羽登久子大府市議会議員)
       e-mail sgjk2010tokai@gmail.com
  【プログラム】
  ■全体会 13:00~15:10 (小ホール)
  ○主催者挨拶
  ○「民主主義のイロハのイ ~?市町村議会の必要性」
    江藤俊昭 山梨学院大学教授
  ○「議会って何?基本のキ ~議会改革の今とこれから」
    廣瀬克哉 法政大学教授、自治体議会改革フォーラム呼びかけ人代表
  ■分科会 15:30~17:30
  ●第1分科会(小ホール)
  ○「議会を使って考える?市民が作った『議会のトリセツ(取扱説明書)』」
    奥村有紀子 『市民必携@議会のトリセツ』編集長 
  ○「参加者による対話型ワークショップ」
    武藤郷史 ファシリテーター、ワールドカフェアドバイザー
  ●第2分科会(604会議室)
  ○「自分たちで考えるまちの未来〜首長マニフェストと総合計画、総合計画と議会の役割」
    西寺雅也 山梨学院大学教授(前 岐阜県多治見市長) 
  ○「総合計画審議会に委員として参画した現実(仮)」
    日高章 (社)日本青年会議所 東海地区 愛知ブロック協議会 会長 
  ■交流会 18:00~19:30 交流会(604会議室、参加費別途)
  ■オプショナルツアー (詳細は検討中/11月28日(日)愛知県刈谷市周辺予定)

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わたしもスタッフとして、参加します。
どうぞお気軽にご参加ください。


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特別養護老人ホームの利用料を軽くするには

全室個室のユニット型特別養護老人ホームは、利用料が高くて、お金がないと入れない。
こうした話が、あちこちで聞こえてきます。

でも
お金がなくても、公的に負担を軽減して、個室特養に入ることができる手段があるんです。

それは、境界層措置 という制度。
年金など、月々の所得が少なくて、食費やホテルコスト(部屋代)に介護保険の自己負担分などを支払うことができない場合に、高額介護サービス費や負担限度額の段階を引き下げることができる制度です。
(特養の食費や部屋代は、所得に応じて4段階に分かれています。この段階のどこに該当するかで、支払う金額が決まるのですが、支払える段階まで引き下げるということですね)

この境界層措置という制度は、介護保険の利用者負担の軽減をすることで、生活保護をうけずにすむようにしようという制度。
ですから、相談先は生活保護担当の部署で、そこから「境界層該当証明書」を発行してもらい、介護保険の部署が、この証明書を確認して手続きするという流れになります。

あまり知られている制度ではないのですが、市町村民税の課税状況にかかわりなく、生活状況にあわせて適用できるという利点があります。
市町村によっては、インターネットでこの制度を知らせているところもあったので、公的機関による説明を以下に転載しますねね。

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介護サービスを利用する際に、居住費や食費等の自己負担額等が規定どおりに適用されると生活保護の最低生活費を下回るが、利用者負担段階を下げることによって自己負担額が下がれば、生活保護を受けなくてすむ場合は、その利用者負担段階を下げる制度があります。(境界層措置といいます)

自己負担が軽減されるものの順番は、次のとおりです。
①保険料滞納者に対する給付額減額措置の免除
②居住費(滞在費)の負担限度額の減額又は免除
③食費の負担限度額の減額
④高額介護サービス費等の上限額の減額
⑤保険料負担額の減額

境界層の適用については、お住まいの区の区役所生活保護担当が調査します。そこで食費・居住費等の自己負担額を(さらに)減額すれば生活保護該当とならないと判定された場合は、証明となる「境界層該当証明書」が交付されます。
「境界層該当証明書」をお住まいの区の区役所保険年金課窓口で、負担限度額認定申請とともに提示していただければければ、負担限度額認定の対象となる、又は利用者負担段階を下げることができます。
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石川県で、特別養護老人ホームの利用料が年収によって差が出る関係で、本来受け取ることができる年金の一部をあえて返上しようとする事例が報道されましたが、上記の制度を使えば、年金をあえて受け取らないという裏技を使う必要はなくなります。

※特養の利用料軽減のために、年金受け取りを一部やめるという件については、以下の記事を参照ください。
 ↓
----------------------(ここから引用です)---------------------
年金返上、逆にお得 特養利用料を軽減へ

 特別養護老人ホームの利用料が年収によって差が出る関係で、本来受け取ることができる年金の一部をあえて返上しようとする事例が22日までに、石川県内で初めて確認された。2007(平成19)年創設の「公的年金支給停止制度」に基づき、金沢市内の無職 男性(80)の家族が金沢北年金事務所に申請する。返上により、利用負担額が年50万 円以上軽減される計算。老後の生活を考え、同様のケースが今後増える可能性もある。
 男性は認知症で要介護4と判定され、今月上旬から金沢市南部の特別養護老人ホーム( ユニット型個室)に入居している。

 本来、男性は国民年金79万2千円と厚生年金8万4千円の計87万6千円を1年間に受け取ることができる。このうち、国民年金11、12月分の受給を辞退。さらに来年1月から厚生年金を受け取らない手続きを取る予定だという。

 辞退する理由は、ホーム利用料の負担が、年金とその他の収入の総額が年80万円を超えるか超えないかで、大きく違うため。県長寿社会課によると、80万円以下の場合、ユ ニット型個室の負担額は「高額介護サービス費」が支給されて月5万1300円(月30 日で計算)で済む一方、超えた場合は9万5130円となり、月4万3830円の差が出 る。

 男性の家族から相談を受けた金沢市内のケアマネジャーは、「男性の場合、利用料だけで年金を使い切ってしまう。制度を活用した方が有利と分かり助言した」と説明する。

 特別養護老人ホームについては、厚生労働省が「全室個室(ユニット型個室)化」を推進しているが、多床室(相部屋)と比べて利用者負担が大きい。このケアマネジャーは「 年金を多くもらっても、日々の生活をトータルで考えると逆に生活が厳しくなるケースが ある」と指摘する。

 金沢北、金沢南、小松、七尾の県内四つの年金事務所はいずれも「これまで同様の例はない」としている。

 日本年金機構の担当者は「男性のケースは全国的にも珍しいのではないか。制度の本来の趣旨からは外れているが、活用しないでとは言えない」としている。

●公的年金支給停止制度 年金改革に基づいて創設された。以前は公的年金を1回でも受 給すれば、受給を停止することができなかったが、月単位で受給を拒否することができる ようになった。日本年金機構によると、制度利用数は年間100件程度という。

http://www.toyama.hokkoku.co.jp/subpage/H20100923101.htm
北國・富山新聞【9月23日04時26分更新】
----------------------(引用ここまでです)---------------------

高齢者のセーフティネットである特別養護老人ホーム。
お金がないから入れない、などという事態が起こらぬよう、さまざまな制度がつくられています。

お金があるなしにかかわらず、自らの尊厳を守るために、個室に入る選択肢は、あらゆる人に保障されるべきだし、そのための方法はある。
問題は、それを積極的に周知しようとしない行政にありそうです。

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末期がん患者の「家で死にたい」という願いをかなえる〜緩和ケア支援診療所

先日、岐阜市で行われた「日本在宅ホスピス協会」の全国大会。
そこで、がん患者を家で看取る在宅ケアを先駆的に行ってきた、東京の「グループ・パリアン」に出会いました。

独居で家族の支援がまったく受けられない人も、ボランティアと医療・看護・介護が一体となって、その人らしい在宅での生活を支援する。そのすごさは、「パリアンだから、できた」、「パリアンじゃなきゃ、無理だよね」という声からも推察できました。

末期がんの患者を在宅で看取る。
そんなことができる医師(病院)は、さばくの砂に埋まった砂金のように、ほんの限られたスーパースターだけ。
残念ながら、いまの日本の在宅緩和ケアは、そういう状態です。

こうした状態を変えるためには、何が必要か。
パリアンの理事長である川越厚医師が、キャリアブレインのインタビューに答えた記事を見つけたので、以下に転載します。

-----------------------(ここから引用です)---------------------

「絶対うまくいく」緩和ケア支援診療所の全国展開を

【第70回】川越厚さん(医療法人社団パリアン理事長、クリニック川越院長)

 国民の3割ががんで亡くなる時代。「もう治らない」と宣告された患者は、どこで死を迎えたいと望むのだろう。「自宅」と答えた時、それは果たして可能なのだろうか―。
 自らが院長を務める無床診療所「ホームクリニック川越」(当時)を中心に、訪問看護や療養通所介護などのチームと連携して地域の末期がん患者への在宅ケアを支援する「グループ・パリアン」(同)を2000年に設立した川越厚さんは、現在の在宅医療体制では末期がん患者の「家で死にたい」という願いをかなえられないと指摘する。
 なぜ末期がん患者に対する在宅医療は進まないのか。今求められることは何か―。日本の末期がん患者への在宅医療に、その創成期からかかわり、現在も第一線で活躍する川越さんに話を聞いた。

■在宅医療を推進する施策はなぜ実を結ばない?

―初めに、末期がん患者に対する日本の在宅医療について、これまでの歩みをどのようにとらえますか。

 わたしが末期がん患者に対して、死への不安の解消や痛みの緩和など総合的なケアを行うホスピス医を始めた20年前のことを思うと、今は夢みたいな状況になったと思います。何が変わったかというと、たくさんありますが、例えば麻薬を使うということは当時大変難しかったです。1989年のMSコンチンの処方剤の発売から始まって、最近はフェンタニルパッチの発売、モルヒネの使用の緩和などが行われ、提供できる医療は非常に変化したと思います。
 また、92年には医療法の一部改正があり、在宅が第3の医療の場として登場しました。このほか、患者や家族の生活の質(QOL)にとって最適であり、また医療経済的に最もコストが低いとの認識から、国はこれまで在宅医療の普及に向けての法整備を進めてきました。
 ただ1つ変わっていないのは、今なお医療者自体が病院中心に医療を組み立て、考えているということです。在宅の実情を知らない人によって在宅が語られている現状があることは、昔も今も同じだと言えると思います。

―実情を知らない人によって在宅が語られているとは、どのようなことですか。

 例えば、がん対策の総合的・計画的な推進を目的として2006年に作られた「がん対策基本法」があります。基本的な考えの1つに、がん患者の在宅医療の推進がありますが、実はこれがうまくいっていない。具体的に計画し始めた時、在宅医療を知らない人が推進を考えてしまったためです。制度を実施するに当たり、従来の病院指導の在宅医療推進から脱却できていない状況があります。
 がん対策基本法には、主に3つのポイントがあります。1つ目は、どういう先生がいるか、薬局がどこにあるかなどについての情報のネットワーク化。ただ、末期がんの患者を在宅で診たいという診療所はせいぜい5%しかありません。2つ目は、病院から患者が戻る場合の手順などを示したパスです。3つ目はコンサルテーション。専門家がいますから、何かあったら相談してくださいというようなものです。
 よくできているじゃないかと。だけど僕らのように現実に在宅ホスピスケアをやっている人間から言うと、実現性はありません。

―具体的にどのようなことでしょうか。

 例えば、ネットワーク化という視点では、ネットワークに含まれる診療所の専門性のなさが指摘できます。がん対策基本法では、地域の診療所の医療レベルを底上げしてがん患者の対応に当たろうとしていますが、先生方の知識を上げるといっても、緩和医療に関しては、医療の知識だけでは不十分です。すなわち、モルヒネや放射線治療について知識を身に付けるだけでは駄目です。死にゆく人を診る難しさは、患者さんやその家族が感じる不安をどう取るか、24時間ケアをどうするか、というところの方にあるのです。
 コンサルテーションするといっても、対応するのは在宅を知らない緩和ケア病棟の方や拠点病院のPCT(緩和ケアチーム)の方です。彼らのアドバイスは、「在宅では無理ですから、入院させてください」ですよ。

■エビデンスに基づく提案を

―では末期がん患者の在宅医療を推進するために今、何が必要なのでしょうか。

 末期がん患者の在宅医療を本当にやろうとする地域の診療所、PCC(緩和ケア支援診療所)を制度的に育てていくことが必要だと思います。今のように、「あなたは末期がん患者を診ますか? はい、診ます」「何例までできますか? 1、2例まで」といったリストから集めた診療所の情報でネットワーク化を進めても、そこの先生では経験がないのだから、最後まで診られないのが落ちです。結局救急車を呼んで、最後は入院です。
 さらに、以前は末期がんの患者さんを受け入れてくれる一般の病棟がありましたが、病床数の削減を掲げる国の方針もあり、そうした病棟はどんどん閉鎖する流れにあります。そうした患者さんにERで対応している現状もあります。そんなおかしなことってないですよね。地域医療の破壊につながる可能性があります。
 だから、専門的に末期がん患者の医療を行う診療所を地域ごとに育てていかなくてはいけません。また、「ネットワークができたらいいよ」ではなく、実際に数字を出さなければいけないのです。

―数字を出すとは?

 例えば墨田区だったら、わたしのところのような診療所が1つあれば、末期がん患者さんの在宅死率は、この10年間で約6%のところが約13%になりました。1か所できただけで、これだけの違いが出ます。岩手県北上市はもっとすごい。人口はそれほど多くはありませんが、15年くらいの経過の中で、6%から24.5%になっています。
 実績としての数字を出さずに、ネットワークのみを新たにつくり、提示して、「これやってみてね」っていう時代ではもはやありません。

―つまり、机上の空論ではなく、根拠のある提案をということですね。
 はい。わたしはネットワークをつくる際の要となる診療所(PCC)の全国展開を提案していますが、これは間違いなく、自信を持ってうまくいくと言えます。わたしが実践してきたことであり、その経験を通じての発言だからです。

■在宅医療を運営する上で必要なこととは?

―先生は昨年、在宅診療推進のために行った研究の成果を厚生労働省に報告されましたね。

 はい。在宅医療をスムーズに行うために何が必要なのかという視点から、05年から3年間かけて、「在宅療養者の看取りにおける訪問看護師と医師との連携に関する研究」と題する報告書を提出しました。要点は大きく3つあります。
 1つ目は、在宅医療は専門性を要求される分野であるということ。わたしが末期がん患者の在宅医療推進に当たってPCCという専門の診療所を構想するのも、そうした理由があるからです。
 2つ目は、チームで取り組まなければいけないということ。実際に医行為にかかわる医師と看護師のほか、薬剤師や介護士との協力体制を持つべきです。
 3つ目は、そのチームをつなぐ、きずなとしての「約束指示」です。約束指示は、パスという言葉で置き換えても構いませんが、皆さんはどうも、パスが1つあればそれにのっとってやればよいと理解している節があると思います。しかし、わたしはそのようには考えていません。

―それはどのようなことですか。

 今、厚労省とか日本で全部やっているのは、1つのパスを地域でやったら、それにのっとってやっていくっていうものですが、現場の医者は必ずしもそれに沿ってはやりません。むしろ、出来上がったものをまねるのではなく、医者が自分でつくらなければいけないと思います。必要な場合には、応用的なものが出てこなければいけないとも思っています。

―既に示されたものに型をはめるのではなく、医師自身が独自のパスをつくり、それをチーム内で共有することが必要ということですね。

■天命としてのホスピスケア

―最後に、先生が在宅でのケアにこだわる理由をお聞かせください。

 今、医者になって40年になります。半分をがん治療の専門医、半分をホスピス医としてやってきました。一方、医者としてだけではなく、患者としての視点に立った経験もしてきました。39歳の時に大腸がんになり、死ぬか生きるかをさまよいました。また、58歳の時には家内が白血病になり、家族の中に患者を抱えた経験もあります。そこから思うのは、人の死とは、生物学的な命の終わりだけではなく、社会的存在としての命の終わりだということ。病院で診ていた当時は決して気付かなかったことです。また、「家族の気持ちって、こんなに大変なのか」ということ。ホスピスケアとは、患者と家族で1人の病人だと考えるのが大原則です。
 なぜ在宅をやるのか。経験上、治療医がさじを投げて「駄目だ」って言ったときに、患者さんにとって一番いい場所は間違いなく家だと、わたしははっきり自信を持って言えるからです。その医療に携わり、進めていくということは、わたしの医者としてのベルーフ、天命だと思っています。
 後には引けない。そんなところですかね。

https://www.cabrain.net/news/article/newsId/23320.html
-----------------------(引用ここまでです)---------------------

川越先生は、大会の最後のあいさつで
「人はだれでも死ぬ」ということを受け入れないと、在宅緩和ケアはむずかしい」
という話をされていました。

医師も、患者も、家族も。
最後はだれもが死ぬ という現実を直視することから、始めなればいけないのかもしれません。

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もう特養ホームはいらない?! 必要なのは「特定住居」と外付けの24時間365日の介護・医療

もう、特別養護ホームはいらない!
この発言の主は、全国に先がけた全室個室の特養ホーム「風の村」をつくった、社会福祉法人生活クラブの池田徹さん。
10/11に参加した「在宅ケアを支える診療所・市民全国ネットワーク」主催の「全国の集いin名古屋」で行われたシンポジウムでの発言でした。

特養ホームをめぐって、このところ個室でなく従来の多床室に戻そうとするような発言や動きが出ていますが、これに対して池田さんは、「個室は人間の尊厳を守る最低条件」ときっぱり。
個室をやめようとか、個室の面積要件を緩和して狭くてもOKとするような提言の裏には、特養ホームに家賃(ホテルコスト)が自己負担となり、金銭的に個室の新型特養に入居できない人がいるという現状があります。
特養の入居費用は、所得別に4段階に分かれていて、3段階以下の人には、介護保険から補足給付という形で、実質的な家賃補助があります。
しかし、生活保護の人の場合、自治体によっては個室の新型特養への入所を禁止しているところがあるのです。
お金があるなしで、何年も暮らす住まいが他人との雑居になるかどうかが決まるのは、本当に問題。
こうした問題に対して、特養に補助を出して、お金がない人も個室特養に入れるシステムをとっている自治体も出てきています。

さて、現状を踏まえて、池田さんが指摘する問題点は、
「特養だけが、最後のセーフティネットになっている」
ということ。
補足給付という形で実質的な家賃補助がある高齢者の住まいは、特養ホームしかありません。
認知症の高齢者が暮らすグループホームも、介護付きの有料老人ホームも、家賃補助の仕組みがなく、お金が支払えなくなれば、退去になってしまいます。
だからこそ
お金がない人は、特養ホームへの入居を求める。
家賃補助を切り離し、高齢者の住まいで暮らす人には、必要度に応じて家賃補助を受けられる仕組みに変えることが必要!
というのが、池田さんの提言です。

そして、特養ホームや介護付き有料老人ホームなどの介護保険での入所施設と、国土交通省管轄の高齢者専用賃貸住宅をひっくるめて、
高齢者の住まいはすべて、「特定住居」に統一する
というのが、もう一つの提言でした。

特定住居というのは、「高齢者の住まいのあり方研究会」が発表した報告書にある概念で、研究会は、高齢者の住まいとして「特定住居」制度の新設を提案しています。

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「特定住居」の定義
(1)個室の最低基準面積を13.2㎡以上とする。
(2)個室にトイレ、風呂、キッチンを必置とする。但し、共用部分(生活単位(=ユニット)ごと)に整備されている場合は任意でも可。
(3)入居者15人に1人の24時間の見守り要員を配置する。賃貸借契約の他に見守り付き生活支援サービス契約を締結するものとする。
(4)生活単位は15名以下とする。
(5)住居の権利形態は一代限りの賃貸借・所有権とし、利用権は認めない。
(6)第三者評価の受審を義務付ける。
※制度サービスは、ケアマネジャーを含めてすべて外付けとする。
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研究会では
「現在の介護保険三施設、特定施設、高齢者住宅を一本化し、特定施設への統合」
を提案しています。
その理由としてあげているのは
・特養には在宅復帰機能も想定されている。
・老健には長期入所者も多く、両者の事業実態は大差ないように考えられる
・介護療養病床は在宅復帰を念頭に置かない『医療付き終の棲家』であり、最も『住まい化』が求められる
の3点。
また高齢者専用賃貸住宅については
「数は増えているものの、介護の実態は千差万別で、介護が必要な高齢者が安心して生活を続けられる場には必ずしもなっていない」と指摘しています。

特養も老健も介護療養病床も、中身はそんなに変わらないという実感は、わたしも持っています。
また、ケア付きケアハウス、介護付き有料老人ホーム、高齢者専用賃貸住宅など、高齢者の住まいがさまざまに増えてきて、選ぶ側からすれば、違いがわかりにくいということもよくわかります。

高齢者の住まいとして、基準をひとつにする。
その上で、
・すべて個室で、13.2㎡以上
・トイレ、風呂、キッチンを個室内に完備
・15人を単位として、24時間の見守りスタッフが1人つく
・第三者評価の受審を義務付ける
などの条件を満たすことが必要になれば、いまある問題はずいぶん解決され、すっきりすると思います。

なにより、統一された基準で、高齢者の住まいすべてに「第三者評価」が義務づけられることが必要だと思っています。

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上野さん講演/在宅ひとり死は可能か?

在宅
日本在宅ホスピス協会全国大会in岐阜の最終日の今日。
市民公開シンポジウムが開かれました。

お待ちかね、上野千鶴子さんの講演タイトルは、ズバリ!
在宅ひとり死は可能か?

パワーポイントを使った講演は、笑わせながら、しみじみと聞かせる。いつものスタイル。
ぼやっ〜と淡い緑色の背景は、なんと、「畳(たたみ)」。
畳の上での大往生が、昔からの高齢者の悲願だから との理由に、なんだか笑えるような、切ないような。
たくさんのデータや、上野さんが日本全国を歩いて集めた情報に
笑って、身につまされ、考えさせられて。
あっという間に時間が過ぎました。

特に印象に残ったことを、記しておきますね。

まず、上野さんが列挙された、ちょっと怖いデータから。
1.だれもが結婚する時代は終わった
男性の有配偶率(妻がいる率)は、60代が最高で、離婚が原因で50代以下は低下。40代は、非婚が原因でさらに妻がいる率が低い。
生涯非婚率の予測は、40代の4人にひとり、30代の3人にひとりが、一生独身の可能性あり。

2.結婚して子どもを産んでも、子どもに先立たれる?!
高齢者を2004年に調査した結果
子どもがいてその子どもが現在、生きている人が、 49.3%
               生きていない人が、44.7%
 → 半分近くの人は、子どもに先に死なれる逆縁に

3.男性の孤立が大きな問題に
正月三が日を、ひとりで過ごした独居高齢者の割合は
          男性     女性
前期高齢者     61.7%    26.5%
後期高齢者     46.8%    32.0%

さらに、上野さんが指摘するのは
施設はだれのためのものか? という視点。
施設入居の待機高齢者は、42万人といわれていますが、施設入居を決めているのは本人ではなく、家族。もっといえば、デイサービスもショートステイも、本人のニーズではなくて、家族のニーズです。
こうした現状に対して、上野さんは
「待機高齢者ゼロ作戦はいらない」ときっぱり言い切ります。

介護保険が始まるまで、介護する家族がいる在宅 か 介護施設に入居 という選択肢しかありませんでした。
今は、在宅と施設の中間である、高齢者専用賃貸住宅やシニアコーポラティブハウスなど、老後の住まい方に選択肢が増えてきています。
また、在宅医療に取り組む医師が少しずつ出てきて、最後まで自宅で、と望めば、在宅ターミナルケアや緩和医療も可能になりました。
こうした指摘を、各地での事例を紹介しながら説明された後、上野さんは再び問います。

おひとりさまの在宅ひとり死は可能か?

上野さんの答えは、 イエス です。
ただし、以下の3点セットがあれば、という条件つきで。

必要な3点セットは
①24時間の巡回訪問介護
②24時間対応の訪問医療
③24時間対応の訪問看護

そして、上野さんの講演は、こんな言葉で締めくくられました。

これからの介護や医療はどうなりますか?
わたしは、よく聞かれます。
明日の天気を聞かれても、明日の天気のことは答えられません。
だけど
明日の天気は答えられずとも
明日の社会保障は、私たちの力で変えられます!

わたしたち、一人ひとりが
老後の介護や医療を、真剣に考え、声を上げていくことで、
わたしたちの未来は変わる!
それを忘れないで、行動しよう!
という、上野さんからのエールと受け取りました。

いま、自分にできることから、少しずつでも
行動することで、未来が変わる!
そう信じて、がんばりたいと思います。

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日本在宅ホスピス協会全国大会で、岐阜に来ています

岐阜に来ています
日本在宅ホスピス協会全国大会in岐阜が、岐阜市で昨日から開催されています。

わたしは、今回、運営実行委員会のスタッフとして入っているため、分科会の書記を務めることになり、分科会のある今日の午前中から岐阜に来ています。

日本在宅ホスピス協会大会は、えらい先生が業績を発表する堅苦しい学会ではなく、日々、自宅で過ごしたいと願う患者に寄り添い、在宅で暮らせるようこつこつ現場で支援をしている医師や看護師、緩和ケアスタッフなどが集まり、情報を交換し、お互いに学びあい、エールを送るための場として始まったとのこと。

その説明どおり、大会はとてもなごやかな雰囲気の中で行われました。

発表されている事例はすごいのに、それを実行している方たちは、ありのままの自然体。人間味あふれる方が多くて、勉強になると同時に、これなら日本の在宅ケアはもっと進むはずと勇気づけられました。

明日の準備もあるため、分科会や大会の詳しい報告はまた改めてすることにして。

今日は、素敵な上野さんの写真を取り急ぎアップしたくて、慌ただしくブログを書いています。

写真は、夜に行われた懇親会で、檀上であいさつする上野千鶴子さんです。

明日、午前10時から行われる市民公開シンポジウムで、上野さんはシンポジストの一人として登場。シンポジストはほかに、名古屋大学総長の濱口道成氏と、作家の柳田邦男氏。

岐阜グランドホテルのロイヤルシアターで、午前10時から午後1時まで。

参加費は無料ですが、先着600名ですので、ご都合のつく方は、早めにおいでくださいね。

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介護保険でお泊りデイサービスが始まるか?!

厚生労働省が、介護保険の高齢者デイサービスに、宿泊サービスをつける方向で検討しています。

「通いなれたデイサービスで、お泊りができたらいいのに」という声は、たしかに家族からよく聞きます。

環境の変化に弱い認知症の高齢者の場合は、通いなれたデイサービスとショートステイの場所が違うのは、確かに本人にとっても不安が強いだろうし、デイの続きでお泊りの方が、抵抗感が薄いかもしれないと思います。

では、デイサービスに宿泊サービスをプラスしようという厚生労働省の動きは、歓迎すべきものなのでしょうか。

この問題について、中日新聞が記事を掲載していたので、以下に転載します。

-----------------(ここから引用です)-----------------

『お泊まりデイサービス』の現状(上)  独居、低所得、認知症あり 生活困難で宿泊続く

 高齢者が日中に通う通所介護(デイサービス)事業所で、夜も高齢者を預かるところが増えている。夜間は介護保険が使えず、全額利用者の負担。認知症の高齢者を日常的に宿泊させる場合や、介護する家族の休息のため一時的に預かるケースなど、高齢社会のしわ寄せが及んだ格好だ。二回に分け、「お泊まりデイサービス」の現状を紹介する。 

 昭和初期の民家を活用した愛知県津島市の通所介護事業所「昭和の時代」。夕方以降も帰宅しない高齢者八人について、スタッフは「デイの利用者のうち、自宅での生活が難しい人たちです」と説明する。

 その一人、六十七歳の女性は、ここに来るまで独り暮らしだった。買い物の仕方も分からないほど認知症が進み、家の中は散らかり放題。「見守りが必要」。デイのスタッフがそう感じても、介護保険に見守りサービスはなく、地域や親族に頼るあてもなかった。

 「力になりたい」と、娘、本人の了解を得て、引っ越してもらったのは昨年十一月。女性の個室は約六畳。夜間は、デイのスタッフが泊まり込んで見守る。「親切にしてもらい、ありがたい」と女性は話す。

 別の六十四歳の男性も以前は独居。認知症で、作り方が分からなくなったカップ焼きそばのごみが、自宅の周りに散乱。配食サービスも手の付け方が分からず、配達された状態で放置されていた。重度の若年性認知症。デイのスタッフが「栄養も取れず危険」と、泊まりを勧めた。

 「行き場がない人や患者さんを預かってほしいと、役所や医療機関から頼まれることも多い」と、金子和敬施設長。「うちのようなところが預かれないと、住む場所がない人、あっても生活できない高齢者が地域で増える」と話す。

 泊まりの高齢者は生活保護受給者が多く、食費やデイの利用料、宿泊費の合計を保護費の範囲内にしなければならない。宿泊費を月二万五千円に抑えている同事業所では、夜間の利用部分は赤字だ。

      ◇

 低所得の独居高齢者が認知症になったら、安心できる住まいを探すのは大変だ。主な選択肢は(1)特別養護老人ホーム(特養)(2)認知症の人のグループホーム(GH)(3)有料老人ホームや高齢者専用賃貸住宅(高専賃)。

 ただ、特養は待機者が多い上、最近整備された個室型の特養は居住費が高く、入りにくい。生活保護の人の個室への入所を認めない自治体も多い。GHは一般に特養より料金が高く、低所得者向けの負担軽減の制度もないため、さらに難関。有料老人ホームや高専賃も、一般に料金が高い。低料金のホームでは、サービスが額相応になることがほとんど。料金にかかわらず「認知症お断り」のところも少なくない。

      ◇

 「自宅での生活に困る認知症の人が増えた」-。独居や高齢者だけの世帯の増加と、低所得者向けの安心できる住まいの少なさを背景に、多くのデイ関係者が感じている現実だ。介護保険のサービスと保険外サービスを組み合わせても困難が解消しきれない高齢者を、一部のデイが預かるという流れができている。「慣れ親しんだデイと同じスタッフが夜もかかわるから安心」とデイならではの強みを強調する関係者も多い。

 ただし、提供されるお泊まりサービスの質はさまざま。NPO法人「高齢社会をよくする女性の会」の木間昭子理事は「高齢者を雑魚寝させている事業所、男女同じ部屋で泊まらせるところもある」と指摘。一部の事業所は、粗末な食事で食費を切り詰めている。

 こうしたサービスは、介護保険を使わない「自主事業」。行政がサービスをチェックし、サービス内容を是正させる仕組みがほとんどない。「基準を設けるなどして、不適切なサービスを排除する必要がある」と木間さんは訴える。

『お泊まりデイサービス』の現状(下) 狙いは在宅介護の支援 費用負担などが課題

 「じゃあ、パジャマに着替えますか」。東京都北区の認知症対応型通所介護事業所「あかり家」のスタッフが文枝さん(94)=仮名=に声をかける。文枝さんは要介護4。週二日、デイサービスに通い、うち月二日は夕方、家に帰らず、そのまま泊まる。

 なじみのスタッフに見守られ、八畳の静養室で床に就く。一泊の宿泊料四千二百円(別に朝夕食費千円)は、夜勤一人、宿直一人の体制にしては格安だ。泊まり事業は都の補助金で成り立っている。

 通所する人の泊まりの受け入れは昨年九月から。一日二人が上限。実際には、月六、七件ほどで、家から通うという基本線を守っている。狙いは、家で介護する家族の支援だ。

      ◇

 在宅介護では、日中は通所介護や訪問介護を利用し、夜間は家族で介護するのが一般的。認知症の高齢者では、夜に出歩こうとする人や、頻繁な排せつ介助が必要な人もいて、家族は気が休まらない。

 家族が日ごろの疲れを取れるようにと、介護保険サービスのショートステイでは、特別養護老人ホーム(特養)など入所施設が高齢者を泊まりで預かってくれるものの、都市部ではサービス自体が不足気味。何カ月も前に予約しないと使えない地域もあり「思ったほどショートが使えず、介護する側が倒れそうになって親を施設に入れた」という話も珍しくない。

 通所施設での宿泊が進めば、在宅介護が続けやすくなるほか、慣れた施設での夜間預かりは、認知症の人にもなじみやすいとして、厚生労働省も、あかり家のような通所介護事業所が介護保険外で提供しているお泊まり機能に着目。早ければ来年度から、通所施設での宿泊サービスを介護保険の対象にし、ショートステイ同様、一割の負担で使えるようにする方向だ。

 厚労省は、通所施設を、保険で宿泊サービスを提供するのにふさわしい場に改修してもらうため、来年度予算の概算要求に改修の補助金として百億円(八千床分)を盛り込んだ。間仕切りやスプリンクラーの設置費用を想定している。

      ◇

 もっとも、デイサービスは本来、昼間限定。夜勤を嫌って通所施設で働く職員も多く、泊まりに対応する職員が確保できるかどうかは不透明だ。

 「本当に困っている人が介護保険を使えないのでは」。通所施設での泊まりが保険適用になっても、要介護度ごとに定められた介護保険の利用枠を日中の介護で使い切り、負担が減らない利用者が出てくる可能性も指摘されている。

 愛知県内の通所施設を週六日利用する要介護4の女性(67)も、そんな一人だ。女性は対応が難しい認知症で、夫は介護うつ。疲れ果てた夫を助けようと、施設は夜間も週一度、一泊九千円(朝夕食込み)で女性を預かってきた。介護保険で泊まれるようになっても、介護保険の利用限度額を引き上げない限り、宿泊の全額負担は変わらない。「ある程度の限度額引き上げも必要では」とこの施設の管理者は提案している。

 「規制が目的では」-。厚労省が「家族支援のため」と説明している「お泊まりデイサービス」への介護保険適用の目的を、こうみている施設関係者は多い。泊まりサービスが保険外の現在は、問題あるサービスを提供しているとの情報が役所に寄せられても、ほとんど規制の手段はない。保険適用になれば、規制しやすくなるとの見方だ。

 「ショートが希望通り使えず困っている家族のために、利用者を時々泊めている」という愛知県内の別の通所施設の管理者は「いい方向に向かえばいいが、現場が動きにくくなる規制では困る」と訴える。

  (佐橋大)

中日新聞 2010年9月30日

-----------------(引用ここまでです)--------------

お泊りは実費という形ですでに実施しているデイサービスは、東郷町近隣でも複数あります。

全国でチェーン展開している「茶話本舗」は、宿泊を800円で実施しています。

介護で疲れ果てている家族には、本当にありがたいサービス。

だけど・・・

介護の質はどうやって担保するのでしょう。

そう考えると、介護保険のサービスに組み込んで、行政が指導監査できるようにしようという厚生労働省の狙いは理解できるように思います。

とはいえ、本来は有料老人ホームの届け出が必要なのに、無届で営業する事業者がいくつもあるのも現実。

お泊りデイサービスも、規制を嫌って、介護保険の届け出をしない事業者が数多く出るかもしれません。

届け出があろうがなかろうが、介護サービスを使う利用者の権利が守られるような仕組みの構築が、なにより必要だと思います。

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