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若年性認知症の方への就労支援〜「要介護」という存在から、働く「職員」へ

65歳未満で発症する認知症(若年性認知症)の問題は、このブログでも何度か取り上げていますが、今日の朝日新聞に就労に関する注目記事が載っていました。

大分市のデイサービス「なでしこ横丁」に、「要介護1」で通っていた若年性認知症の足立さんが、職員として雇用されるという記事。
この足立さんの挑戦について、「なでしこ横町」の施設長が報告する講演を昨年12月に聞いていたので、とうとう職員として働けるようになったんだと、胸が熱くなる思いです。

認知症を患いながらも、仕事がしたいとデイサービスに通いながら、懸命に就労のための訓練に励んだ足立さんも素晴らしいですが、足立さんの「仕事をしたい」という思いをかなえようと、デイサービスの枠を飛び越えて就労支援した施設長もすごい!
「介護される存在」から「働く職員」になる。
こうした試みを、日本全国でできるように応援したいです。

以下、記事を転載します。(ホームページに掲載されていなかったので、手入力しました)

----------------------(ここから引用です)--------------------

若年性認知症 施設で訓練中の足立さん
「要介護」から職員へ

 「毎日、仕事が楽しい」。2007年に「患者を生きる・認知症編」で登場した、大分市の若年性認知症の足立昭一さん(61)が近く、介護施設のデイサービス職員として働き始める。働き盛りで発症することが多い若年性認知症の人は、仕事をしたいと切実に望んでいるが、支援する制度はまだ整っていない。

「失敗経験よくわかる」

 「はーい、バンザイして。マンザイじゃないよ」
 足立さんはジョークを飛ばしながら、車いすの男性が服を脱ぐのを手伝い。大分市の介護施設「なでしこ横丁」。足立さんは週2回、デイサービス利用者として通う。働くという目標に向けた機能訓練のメニューとして、施設職員と2人1組で入浴介助などの仕事に携わっている。
 「体をふいて」と職員からタオルを差し出されても認識できず、ドライヤーを渡されてまごつく場面もある。ふとわからなくなる、忘れるといった病気の特性から、お茶入れや掃除などは苦手だ。
 半面、人との対話能力が高く、面倒見がいいので、うつむいているお年寄りがいれば「どうしたの」と声をかけ、話し相手になる。「認知症だとたくさんの失敗をするから、お年寄りだって落ち込む。その気持ちは、自分も認知症だからよくわかる」と足立さんは言う。
 施設長の吉川浩之さんは、「職員は、その人のできない面ばかり見てしまい、必要な支援を忘れているのではないか。足立さんの存在で、利用者本位のケアを考える力が職員についた」と話す。
 市職員だった足立さんは2006年、57歳でアルツハイマー型認知症と診断され退職。事務は難しく、車も運転できないが、体力はあり、働きたい意欲が強かった。再就職先を探しに障害者職業センターに行ったが、職業能力評価の段階で「働くのは無理」と言われた。農作業を手伝った時期もあるが、そばに指示する人がついていないと作業は難しいことがわかった。
 「なでしこ」に通い始めたのは昨年11月から。月曜と火曜にやってきて、他の利用者の入浴介助や送迎、ゴミ捨てなどをする。職員が常に見守る必要があるが、月曜日にできたことは火曜日もできることが多く、訓練効果もある。
 「私にはフリーの日がないんですよ」と足立さんは苦笑いする。「でも、よかった、ありがとう、と喜ばれるのがうれしいし、やりがいを感じる」。妻の由美子さん(51)は「本人が生き生きすることで家族も気持ちがいい。うちは子どもがいないが、経済的に困る家族も多いはずで、認知症でも働ける可能性を切り開きたい」と話す。
 足立さんは要介護1で、これまでは「仕事」をしていても、デイサービス利用者として利用料を払っていた。吉川さんは、足立さんの仕事ぶりから十分働けると考え、今月中にも雇用契約を結ぶことにした。
 ただし、病気は進行する可能性があるため、独自の評価項目で足立さんの仕事を毎回評価し、作業が難しくなれば、再びデイサービス利用者に戻ってもらう。そのうえで、どう援助すれば仕事ができるようになるか、職員と一緒に模索する予定だという。
 吉川さんは「認知症の症状は人によって違うし、慣れた環境で、慣れた支援者がそばにいることが大事。でも今の就労支援の制度はどれもぴたりとはまらない。だから、介護事業所で雇用するモデルを示したい」と話す。

就労支援 手探り段階

 65歳未満で発症する認知症を若年性認知症といい、厚生労働省は全国に約3万8千人いると推計する。現役の50代で発症することが多く、就労支援は大きな課題だ。
 認知症は障害認定の対象で、障害福祉サービスの中には、職業訓練や、職場に支援者(ジョブコーチ)を派遣するなどの就労支援メニューがある。認知症の症状や進行は人それぞれで、個別対応が必要だが、適切な支援があれば一定の仕事ができる可能性がある。そこで国は昨年、若年性認知症の人の就労支援に医療や福祉、ハローワークなどでネットワークを作り、障害福祉サービスを活用するよう求める通知を出している。
 だが、実際には障害福祉分野に認知症ケアのノウハウは乏しく、介護分野で試行錯誤しているのが現実だ。
 東京日野市の「グループホームきずな」は、2007、2008年度、東京都の認知症支援拠点モデル事業として、「就労型デイ」を試行した。公募した12人それぞれの人生を聞き、主婦には和裁、元菓子職人には包丁とぎ、元大工には木工製品の修理といった「仕事」を担ってもらった。報酬は昼食の提供。
 本村雄一所長は「病状が進行する人もいて、真の就労は難しい。でもニーズはあり、生きがいにもつながり、手ごたえを感じている」と話す。今春からボランティアらが支援する形で再開した。
 東京都新宿区のNPO法人若年性認知症社会参加支援センター「ジョイント」では、2007年から、若年性認知症の人が週2回「出勤」してきて、近くの公園の掃除や、手工芸品の制作などの「仕事」に携わっている。
 所長で作業療法士の比留間ちづ子さんは、「仕事というチャレンジできる場の確保が大事。病状にのみ込まれることを阻止し、本人の自立支援につながる」と話す。結果として対価を得るに越したことはないが、稼ぐことが目的ではない。また、そばで支える人の存在が欠かせない。
 「介護サービスでも障害福祉でも就労支援でもない。若年性認知症に特化した個別対応が必要だが、抜け落ちてしまっている」と比留間さんは言う。

(朝日新聞/2010年4月15日朝刊)
---------------------(引用ここまでです)-----------------------

だれにとっても、働くことは権利です。
なんらかの障がいがあっても、認知症を患っていても、年を取っても、
働きたいという思いのある人には、仕事ができるように寄り添って支援していく仕組みがほしいと思います。

記事は若年性認知症の方の就労支援でしたが、若年性認知症でなくても、たとえば介護施設に入っているお年寄りで、ちょっとした仕事(内職など)がしたいと望んでいる人はいるのではないでしょうか。

与えられるだけの存在から、与えることができる存在へ。
就労支援がそのキーワードになるのかもしれません。
介護される存在から働く人に
介護の場でも、就労支援について考えていきたいと思います。

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