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「身体拘束は違法」判決から1年がたって

介護の現場では、縛ったり閉じこめたりして身体の自由を奪う「身体拘束」が禁止されています。
ですが、未だに「安全のため」と称した身体拘束が、多くの介護施設で行われています。

そんな中、昨年、名古屋高裁で、病院で入院していた80代の女性に対する身体拘束に対して、「同意のない拘束は原則違法」という判決が出たのは、画期的な出来事でした。
それから1年。
最高裁での弁論が行われるということで、注目が集まっています。

概要について、今日の新聞から引用します。

------------------------(ここから引用です)----------------------

「身体拘束は違法」判決から1年余り
基準求める病院・患者

きょう最高裁弁論
愛知県一宮市の病院に入院していた80代の女性が、不要な身体拘束でけがをしたとして賠償を求めた訴訟で、「同意のない拘束は原則違法」とした名古屋高裁判決から1年余り。
判決は、患者の安全と尊厳のはざまで揺れる医療現場の実態を浮き彫りにした。
25日に最高裁で開かれる弁論では、病院、患者側とも身体拘束の具体的な基準を示すよう求める方針で、最高裁の判断が注目される。

原告の女性は腰痛治療のため入院中、ナースコールを繰り返したことからベッドのさくに縛られ、手首などを負傷したと名古屋地裁一宮支部に提訴。
同支部は訴えを退けたが、名古屋高裁は昨年9月に「拘束は身体機能の低下をもたらすだけでなく、人間としての尊厳をおかす」と判断し、原告側逆転勝訴の判決を言い渡した。
画期的な判断との受け止めが広がる一方、医療現場からは「医療が成り立たない」などの声もあがる。

病院側の代理弁護士は「高裁判決後、訴訟を恐れた病院で患者や家族の同意書を得ようとする動きが広まった」。
現場は人手不足などからぎりぎりの状態だとし、「どんな場合なら許されるのか、明確な指標がなければ混乱する」として、最高裁に基準の明示を求めるという。

内科病棟勤務の30代の看護師も「本当はやりたくない。でも、手術後に点滴を抜いてしまうなどやむを得ない場合は、必ず家族と本人に説明し同意書を得ている」と話す。

原告側は、拘束には医師の判断が必要とし、緊急避難としての場合でも、具体的で切迫した危険がある場合に限られると主張。
「今回はいずれの要件も満たさず違法だ」とする。
中谷雄二弁護士は「当直医がいたのに看護師は判断を仰がなかった。拘束が日常化していたためだろう」と言う。

原告の女性は2006年9月、亡くなった。
裁判を受け継いだ長女(67)は「腰が痛く横向きにしか眠れないのに仰向けにされ両手を縛られた。おかしいことはおかしいと認めてほしい」と話している。

点滴減らす・ベッドやめ布団に
「縛らない」実践の病院

拘束ゼロは本当に可能なのか…。
全国に先がけて1980年代半ばから「縛らない医療」に取り組む、東京都八王子市の上川病院を訪ねた。

126床の入院患者のほぼ全員が認知症の高齢者だ。
午後3時、軽食の時間に患者が食堂に集まってきた。
点滴の人は少ない。
理事長の吉岡充医師は「点滴を外してしまうから、と手を縛られることが多い。食事のケアを工夫すれば、点滴自体を減らせる」という。
ベッドから転落しそうになった患者の個室には、畳と布団2枚を敷く。

転落や転倒による事故は年間約10件で骨折などは4〜5件。
日中は患者1.6人にスタッフ1人だが、夜間は126床を夜勤7人で担当する。
訪ねた病棟では34人に対しスタッフ2人。原告が入院した病院の夜勤体制は27人に対し看護師3人だった。
吉岡医師は「現場の負担が増えているのは事実」とし、「いったん縛るとなかなか外せず、拘束されて動けなくなるとあっという間に弱り、尊厳を傷つけられたまま死に至る」と話す。

(朝日新聞・朝刊 2009年12月25日)
---------------------------(引用ここまでです)---------------------

特別養護老人ホームや老人保健施設などを訪れた時に、身体拘束を目撃することがあります。
一番、強烈な印象として残っているのが、ある介護施設で会った車椅子の男性のこと。
車椅子から立ち上がれないよう、安全ベルトという名の身体拘束で、車椅子に縛り付けられていたのですが、その男性が、見学で訪れたわたしに向かって、
「トイレに行きたいので、ベルトをはずして」と懇願するのです。

どんなに懇願されても、見学者が勝手にベルトをはずすことはできないので、介護職員を探して「トイレに行きたいのでベルトをはずしてほしいと、おっしゃっていますよ」と伝えたのですが、
「おむつしてるんだから、そのまますればいいでしょう」
と、その男性に向かって言い放たれたのです。
非常に衝撃を受けると同時に、「施設に入ったら、尊厳なんてない」と、思い知らされる出来事でした。
(もちろん、そんな介護施設ばかりではありませんが)

身体拘束がなぜ問題なのか。
どうしたら身体拘束をせずにすむのか。
ということに対して、厚生労働省が高齢者ケアにかかわる人に対して出したのが、「身体拘束ゼロへの手引き」です。

2001年の身体拘束ゼロ推進会議で報告された、「身体拘束ゼロへの手引き」ですが、ぜひ多くの人に目を通してもらい、身体拘束は許されないという意識を持ってもらいたいのです。
というのは、身体拘束を行っている介護施設で、必ずといっていいほど聞かされるのが、
「施設としてはやりたくないが、家族が望むので身体拘束している」
という意見だからです。

家でみられないのだから、病院や施設では人手が足りないのだから・・・
縛ってもしかたがない?
高齢者だから、認知症だから・・・
縛られてもしかたがない?

いいえ!
そんなことは、絶対にありません。

身体拘束は違法であり、許されない行為。
最高裁での判決が、尊厳ある医療・介護を後押しすることを願います。

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コメント

初めて投稿します。今までの山下さんのブログを拝見しました。どれも先生が描く理想のそして空想の机上論ばかり。物事には意味があり理由があります。この意味と理由には触れずに批判ばかりな先生の意見には先が見えません。介護、医療のことを先生は判っていると記されていますね。それならば何故批判ではなく先生の体験をもとに病院や施設で手本を示さないんでしょうか?先生は一般の人ではなく東郷町を代表されている議員さんです。少なくともこういったブログで医療や介護を批判するならば1ヶ月は勤めていただき現実、意味、対処法を後日の述べていただきたい。暇がない。と言われるかもしれませんが、それが先生の仕事です。東郷町の医療、介護の施設で新米さんとして身分を隠して働き、事実を知って下さい。それが東郷町の住民のためであり議員としての仕事だと考えます。

投稿: | 2009年12月27日 (日) 06時14分

コメントいただきまして、ありがとうございました。
今までのわたしのブログにも、目を通していただいたようで、感謝しています。

わたしが介護についてお話していて、たまに、「そんなの、理想にすぎない」と言われることがあります。
そのとおりだなと思うのですが、それでもあえて、理想を語らなければと思っています。

それに、「理想だ」、「机上の空論だ」と言われるわたしの思いは、実際にそうした理想に近い介護を行っている施設を自分で訪問し、施設長さんから話を聞かせていただいた経験に基づいたものです。
「理想」かもしれませんが、まったく日本に存在しない介護ではないのです。
実際に実践して、介護保険で黒字運営されている実例があるのですから、まるっきりの「机上の空論」ではないと思っているのですが…。

実際に1ヶ月くらい介護現場で働いてから発言してください。
というご指摘は、もっともだと思います。
ぜひ実践したいと思っております。
(またその結果は、ブログで報告させていただきます)

最後に。
お願いですが、「先生」と呼ぶのは勘弁していただけませんか。
議員であるだけで、「先生」と尊称されるのは違うのではと思っています。
わたしのことは、ぜひ名前でお呼び下さい。

いろいろご指摘いただきまして、ありがとうございました。

投稿: 山下りつこ | 2009年12月29日 (火) 01時09分

山下様

お勤めご苦労様です。

早速ですが…。

まず、地方議会議員〜国会議員の給料や定数を減らして、そのお金で介護職の待遇改善をしてみるっていうのはどうですかね?

人手も集まるかもしれないし、人手が足りてれば、介護の質も良くなるかもしれないですよ。

ポイントは政治家がどこまで自らを犠牲にどきるのか?ってとこなんですけどね。

投稿: NGC | 2010年3月16日 (火) 00時41分

NGCさま

コメントいただきまして、どうもありがとうございます。

介護職の待遇改善をするには、今まで以上に介護保険に税金を投入するしかないと思っています。
そのための財源として、地方議員、国会議員ともに、給料・定員を減らすというのは、いいご指摘ではと思います。
わたしの持論として、地方議員はボランティアでという考えがありますので、現在の報酬を減らすことには賛成です。(東郷町議会では、去年7%削減済み。また今開会中の3月議会でまた議員報酬削減の議案が出ており、わたしは賛成するつもりです)

投稿: | 2010年3月17日 (水) 00時16分

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受信: 2009年12月27日 (日) 17時36分

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