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自殺はやめて、図書館へ

ちょっと刺激的なタイトルですが、昨日の朝日新聞夕刊に連載されている「3万人の命に」(9)で見つけた言葉です。

年間3万人が、自ら命を絶つという悲劇が、ここ数年続いています。
死にたいほどつらい時は、図書館へ行こう!
というメッセージがアメリカの図書館ポスターに掲載されているのだそうです。
「図書館は、人が生き延びていくための場所」
という考え方が衝撃的で、深く心に残りました。
まずは、記事を以下に転載しますね。

----------------------(ここから引用です)------------------------
3万人の命に(9)
人生の息抜き 図書館で

自分なんか……と、ひとりぼっちで悩んでいるあなた。
図書館に、解決のかぎがあるかもしれない。
万巻の書、静かに流れる時。
その森の中では、思っていたより世界はずっと広い、と感じられるはずだ。

図書館が育む生きる力。
日本でそれを唱えているのは、日本図書館協会の元理事長、竹内さとる(82)である。

もう30年近く前になる。
たまたま開いた本に、米国の図書館のポスターが載っていた。

ピストルをこめかみに当てた憂い顔の男の前に、積まれた本の山。
その下に、英文でこうあった。
「自殺しようと思うなら、やめなさい。そのかわり図書館へおいでください」

「図書館は、人が生き延びていくための場所なんだ」。
竹内は深く感じ入った。

敗戦を中国で迎え、日本人社会の混乱を目の当たりにした。
帰国の判断を占いに頼って財産を処分し路頭に迷う人、満州国復活を信じて内戦に参加し、大けがをする元兵士。
危機に流されてしまう判断力、知識の不足を痛感し、戦後はずっと図書館の充実に奔走してきた。

大学の授業や講演で、あのポスターの話をし続けている。
講演録も出された。
もっとも「おもしろい、と受け止めてくれる人がなかなかいなくてねえ」。

竹内の思いは、琵琶湖のほとりの図書館に届く。
才津原哲弘(さいつはらてつひろ)(63)は2001年、竹内の講演録を読んで思ったのだ。
「これこそ、僕のやろうとしてきたことだ」

東近江市になった旧能登川町が造った能登川図書館。
才津原は1997年のオープンから、名物館長だった。
来館者に次々に話しかけて、本をどんどん勧める。
世間話にも花を咲かせた。
ときにはシャツをはだけ、手ぬぐいをぶら下げて。

千葉や福岡の図書館をへて、才津原は能登川町にスカウトされた。
広いフロアに低い書架。
その合間にイス。
畳や喫茶コーナーもあって、比叡の山並みがみえる。
ふらっときて、ふうっと息が抜け、自分を解放できる場所づくりを目指した。
意気込みが伝わり、人口2万3千人の町で初日に4千人が訪れた。

そんな時、「自殺はやめて、図書館へ」という言葉を見つけた。
終戦の翌年、広島で生まれ、原爆で亡くなった親族の話を聞いて育った。
爆心地を歩いた母は夏になると、よく寝込んだ。
だから、どうしても「命」にかかわる言葉に敏感になる。
才津原は、地域に向かい合う姿勢をいっそう強めた。

ある日、役場の課長から聞いた。
ひとり暮らしの高齢女性が、病気で図書館通いができなくなり嘆いている、と。
自宅を訪ねると、大学ノートを見せてくれた。
4年間で借りた420冊、その1冊1冊の感想文がつづられていた。
本を毎月届けることにした。
彼女は、「図書館は魂をいやすところでした」という言葉を残して亡くなる。

才津原は2007年に退職。
福岡で無農薬農業を始めている。
でも、図書館について語り出すと止まらない。
「一度、ふらっと行ってみてください」

京都市で不登校児らの学習塾を開く虫賀宗博(54)は、図書館にいい印象は持っていなかった。
「いい所なんだがよそよそしい、昔のクラシック喫茶みたいなところ」。
だが、才津原と知り合って変わった。
「こんなこともできるんだ」

虫賀は新聞記者を1年で辞め、自宅兼塾の6畳2間で、作家の松下竜一ら、これはと思う人のミニ講演会を開き、社会や人生を考えてきた。

あるとき、才津原から、米国の図書館のポスターの話を聞き、胸に落ちた。
才津原にミニ講演会の講師を頼んだ。
タイトルは「自殺したくなったら、図書館へ行こう」。

同じような表題の文章を2005年夏、岩波の「世界」に投稿した。
そこにはこうある。
「図書館は、生きることのすてきさを味わわせてくれる場所だ」

現在、全国の図書館は財政難で資料費削減、外部委託が進む。
いつでも、無料で、何度でも、ぼんやりしているだけでもいい。
そんな場所はほかにあるだろうか。
命の森を枯れさせてはいけない。

(朝日新聞・夕刊 2009年12月21日)
----------------------(引用はここまでです)-------------------------

今日が最終日だった、12月議会。
指定管理者の継続についての議案が4議案出て、すべて賛成多数で可決となりました。
(今回、東郷町は指定管理者の公募をせず、すべて継続という選択をしました)

指定管理については、12月議会がはじまる前の全体会議で、町から「図書館運営についても指定管理とし、指定管理者は東郷町施設サービス株式会社とする」という案が示されました。
図書館協議会での反対・慎重論もあって、今回の議案としては出てきませんでしたが、図書館の指定管理については、非常に問題が多いと思っています。

生きることを支える場所としての図書館。
命の森を枯れさせないよう、今後の図書館運営については、もっと議論していきたいと思います。

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