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認知症で苦しむご本人の思いを聞く

若年性認知症の方が働く、就労継続支援事業所に行ってきました。

そこで、認知症を患っているご本人から話を聞く機会に恵まれました。
グループホームや特養などで、認知症のお年寄りから話を聞くことは何回もあったのですが、今回は、きちんと病名告知され、その病気がなおらないこともご本人が受け止めた上での話でした。
非常に重いものを感じましたが、取材に応じて話していただけたことを生かすために、できるだけ多くの方に聞いていただくべきだと思い、ここでお伝えしたいと思います。

Aさんがアルツハイマーになったのは、まだまだ働き盛りの頃。
記憶がなくなり、仕事に支障がでてきたものの、まわりは気遣い、「何にもしなくていいですよ。元気に通ってもらえれば」とフォローしていたようです。
Aさんは、その頃のことを、
「すごくよくしてもらったけど、まったく面白くなかった」
と表現していました。
その後、Aさんは会社をやめるのですが、やめるきっかけになった日の出来事を、次のように語ってくれました。

「(仕事のお得意先を電車でまわり、会社に帰る時になって)駅で急に、電車の乗り換えがわからなくなってしまった。乗る電車がJRなのか、名鉄なのか、どこの駅でどの電車に乗ればいいのか、わからない。これでは、会社に戻れないと頭が真っ白になっていたら、突然、バッシャ〜ン!!! と、ガラスが割れたみたいなすごい音がして…。気がついたら、手に持っていた会社の大事な書類をバサッと落としていた。書類は紙なんだから、落としてもそんなに大きな音がするはずはないんだけど、その時は、すごい音が聞こえた。下に落としたんだから、すぐにかかんで拾えばいいと思ったんだけど、拾おうと下を見ても、書類がない。もう真っ青になって、おろおろしながら『何か忘れ物したみたいなんですが、ないですか?』と駅員さんに尋ねに行った。そうしたら、書類が届いていて、本当によかったけど・・・。会社の大事な書類を落とすなんて、わたし1人が責任をとってすむようなことじゃない。翌日、会社に『やめます』って、言いに行ったよ」

会社をやめてからは、Aさんは家にいたのですが、
「夕方、どこにおるのか、わからなくなる」
「とにかく東西南北が、わからなくなって、あれ? どこにおるんかなぁという感じ」
という状態に。家を出て、外を歩き回り、奥さんが探しにいくという日を繰り返していたようです。

その後、障がい者のための就労継続支援事業所で働くことになるのですが、今では
「ここがあって、元気に楽しく明るく生活できている。スタッフも親か家内のように親身になって様子をみていてくれるし、こんないい所はない」
と語るほど、Aさんは就労継続支援事業所での毎日を気に入り、軽作業にいそしんでいます。

Aさんはご自身がかかっているアルツハイマーについて
「おっそろしい病気だぞ。この病気は」
と語ります。
「悪いやつだわ、アルツハイマーは。記憶はちっとも戻らん。この病気はなおらんから」
「今日が何日か聞かれてもわからんし、曜日なんか、ぜんぜんわからん。でも、腕時計で、何月何日か出るのがあって、それを買って腕につけてると、(わからんでも見ればわかるから)ほっとする」
と、気持ちを話してくれました。

Aさんは一見、非常にほがらかで明るく、活発な方のような印象でした。
ですが、楽しそうに話す裏側に、アルツハイマーになったつらさを抱えていらっしゃる。
認知症の方に対しては、ご本人が(記憶の欠落のために)答えられないことや、答えに困るようなことを聞いてはいけない(ご本人の負担になり、不安になってしまうので)ので、はっきりしない部分もあったのですが、ご本人のつらさや、どう感じていらっしゃるかの一端はうかがえたと思います。

本人が望む支援をしていくために、認知症の方の話を聞くことは非常に大切だと感じた1日でした。

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