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厚生労働省への陳情報告記②

昨日に引き続き、「厚生労働省に行ってきました」報告その2です。

さて、今回、「介護施設と地域を結ぶ市民の会」で出した陳情は、2種類。
ひとつは、介護の質を上げるために介護職員の人員配置を見直すことについて。
もうひとつは、「介護情報の公表」制度について、今のやり方を見直すことへの提言です。

2種類のことで面会をお願いしたので、厚生労働省の担当者もそれぞれ1名ずつ。
おふたりでの対応となりました。
対応してくださったのは、老健局計画課の永谷さんと、老健局振興課の中島さん。

厚生労働省のおふたりに、陳情書と提言書の実物と資料を提出して、短時間でも説明できればと思っていたのですが、驚いたことに、こちら側から出した意見への回答が用意されていたのです。
そのため、面談は、厚生労働省からの回答の説明から始まりました。

具体的な中身を紹介したいのですが、ふたつの内容がごちゃまぜになるとわかりにくいので
まずは、介護の質を上げるための陳情書について、厚生労働省とのやりとりを報告します。
(こちらが出した陳情書の全文は、ブログの最後につけておきます)

陳情書で厚生労働省に求めたことは、大きくまとめると次の2つ。
①介護職員1人に対しての入居者の数を定めた最低基準「1対3」を引き上げ、介護職員1人に対して入居者2人(1対2)に近づけてください

②手厚い人員配置をしている施設が報酬で報われるよう、1対2.5以上、1対2以上など基準を設け、介護報酬を上乗せするなどの報酬体系を検討してください

厚生労働省からの回答は、
【①について】
国としても介護施設の実情は、介護経営実態調査で把握している。
指摘のとおり、たしかに、施設内の要介護者は平均要介護度で、3.47→3.81 と重度化している。
また介護施設の介護職員数についても、従来型で 2.4対1。ユニット型で 2対1が平均となっており、最低基準が実態とあわなくなっている現状は認識している。
しかし、最低基準の引き上げを行うと、現在、3対1のぎりぎりで運営している施設をどうするかという問題が出てくる。経過措置の期間を設けるという案もあるが、現状では難しく、今回の見直しでは、最低基準の引き上げまでは手をつけていない。

その代わりに、
・重度の入居者が一定割合をこえた場合
・認知症へケアへの対応(認知症について、一定以上の研修を行っているなど)
・介護福祉士など、資格のある介護職員が一定割合をこえた場合
・夜勤の介護職員の配置を増やした場合(1人追加するごとに加算)
・常勤職員が一定割合をこえた場合
・看護職員の配置
を行う施設に対しては、介護報酬に加算をつけて、評価する改正を行う予定である。

【②について】
1対2.5以上、1対2以上など、最低基準よりも手厚い人員配置をしていることに対して、加算をして介護報酬を増やすと、介護の手間がどのくらいかかったか、という評価が入らなくなってしまう。
軽度の人ばかりを集めていても、介護職員の数が多いというだけで、加算をつけることになってしまうのではと懸念している。

以上の回答を受けて、わたしたちは、次のような疑問と反論を投げかけました。

○介護の手間は、いちがいに要介護度の重さだけでは決まらない
介護保険は介護の手間に対しての報酬体系となっていることは理解しています。
しかし、認知症の方の場合、自分で動き回れる要介護度1・2の軽度の場合の方が、ベッドで寝たきりになった要介護5よりも、介護職員の関わりが必要であり、介護の手間はかかります。

○要介護度の重さだけで報酬体系を組むことで、悪徳業者の金儲けに利用される実情がある
介護療養型病床の廃止に伴い、医療依存度の高い要介護5の人だけを集めた「寝たきり高齢者専用賃貸住宅」や、寝たきりの人しか入居できない有料老人ホームなどが増えてきています。
ある施設では、胃ろうの人しか入っていないからと、施設内に食堂も洗面所もなく、居室内にはベッドのみ。ずっと天井をみたまま寝たきりにさせており、人権侵害に近い劣悪な介護状況でした。
要介護5の人だけを集めれば、寝たきりで、文句もいわず、報酬も高いからと、こうした儲けのみのために開設するような施設をまねくことに繋がっているという問題点を認識して、対応策をぜひ考えてください。

○質の高いケアへの評価が報酬に連動していない
現在の仕組みでは、介護度が重いほど報酬が高くなる制度のため、介護度が軽くなった場合は、逆に施設に入る報酬が低くなってしまい、良い介護をしても報酬として報われない(かえって損をしてしまう)、矛盾の多い制度となっています。
県内の特養ホームをまわっての体験ですが、ある特養では、施設長さんが「うちに入ると、みんなすぐに寝たきりになるね。歩いて入ってきた人も、じきに車いすになって、何ヶ月かすれば寝たきりだ」と、豪語されました。実際、そこでは、昼間でも居室のベッドに寝たきりの入居者さんが多数おられました。しかし、要介護度が重くなる人が増えれば増えるほど、その施設は儲かるというのが、今の介護報酬の仕組みです。
入居者のうち、介護度が軽くなった人の人数で加算したり、介護度が重くなる人の割合があまりに多い施設は減算したり、どんなケアを行っているか(介護の質)によって評価し、報酬に反映するような仕組みに変えることが必要だと思います。

○ユニット型の特養ホームの報酬見直しが必要
ユニット型の新しい特養ホームは、今の最低基準3対1では、ひとつのユニット(10人)に昼間でも職員が1人しか配置できません。これでは、個別対応でゆっくり入浴してもらうことも、物理的にできない状態です。
実際に3対1の最低基準で運営しているユニット型施設では、ユニットごとに入り口を施錠し、個浴の設備があるのに使えないで、まとめて1階の機械浴室で入浴させるなど、本来めざすべきケアがまったく行えない状況でした。
また夜間については、2ユニットに1人という体制で、これでは「ふだん担当していないユニットの入居者も夜だけみなくてはならず、状況がわからないままで不安だ」という介護職員の声を聞きました。
ユニット型については、報酬を見直し、最低2対1で職員が配置できるようにすべきだと思います。

以上の指摘に対して、厚生労働省の回答は。

介護報酬に、ケアによって入居者の介護度が改善したかどうかの反映は、いまのところない。
しかし、質の高いケアを評価し、どう報酬に反映させるかという問題意識は持っており、検討しているところである。

ユニット型の特養ホームについての指摘は、こちらも問題だと捉えている。
ユニットの報酬見直しは、再来年、検討する予定だ。

とのことでした。

最後に、会で厚生労働省に出した陳情書の全文を、入れておきます。
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介護の質を保つための職員体制を求める陳情書
                           平成21年1月15日
内閣総理大臣、厚生労働大臣殿
           「介護施設と地域を結ぶ市民の会」代表 山下律子

 市民ボランティア団体「介護施設と地域を結ぶ市民の会」は、介護保険の始まった2000年から愛知県内の介護施設に対してアンケート及び訪問調査を行ってきました。昨年、2007年度に県内180施設の特別養護老人ホームを調査したところ、なかなか必要なだけの介護職員を確保できず、重度化する入居者の介護に疲弊する現場の姿を目の当たりにしました。施設への訪問では施設長の聞き取りも行い「介護報酬が少なく介護職員の待遇維持が難しい」「介護報酬を見直し、職員に還元されるような体制作りをしてほしい」などの声を聞きました。
 特別養護老人ホームの入居者は高齢化(平均84.1歳←H13は82.7歳)、重度化(要介護4・5の平均割合58.1%、最高87.4%←H13は50.2%)が進み、国が最低基準として定めている「介護職員1対入居者3」という人員体制では、1人1人のニーズにあった個別ケアを提供するのは困難になっています。調査結果では、介護職員の人員体制は、全施設の平均で「1対2.34」。全室個室のユニットケアを行う新型特養では「1対1.5」と基準の倍の人員体制をとっている施設が半数に上がっています。国の最低基準を今の実態に近づけ、国が求める個別ケアが提供できる介護報酬を保障する必要性を痛感します。私たちが安心して老後を送るためにも、介護施設の報酬を上げ、介護職員の人員を保障することが急務であると考えています。
 以上の理由から、次の2点についてご配慮いただけますようお願い申し上げます。

1. 介護職員1人に対しての入居者の数を定めた最低基準「1対3」を引き上げ、介護職員1人に対して入居者2人(1対2)に近づけること。また、そのために施設が必要な人材を確保できるよう、介護報酬を上げること。
2. 手厚い人員配置をしている施設が報酬で報われるよう、1対2.5以上、1対2以上など基準を設け、介護報酬を上乗せするなどの報酬体系を検討すること

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「介護情報の公表制度」についての提言書については、
その3に続きます。

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