さて、引き続き「厚生労働省に行ってきました」報告その3です。
今回で最終ですので、よろしくおつきあいくださいませ。
今日の報告は、厚生労働省に出した「介護サービス情報の公表制度についての提言書」についてです。
「介護サービス情報の公表制度」というのは、3年前の介護保険改正で、介護サービス事業者すべてに義務づけられたもので、決められた項目について、そこの事業所で行っている介護内容を情報公表する仕組み。
情報の公表は、1年に1度、必ず行わなければなりません。
また、その内容が本当に行われているかどうかを調べるために、調査員が介護サービス事業所を年に1度訪問し、調査した結果を公表することになっています。
介護サービス事業者の情報は、県ごとにホームページで公開されます。
愛知県の介護情報は、以下のホームページで見ることができます。
愛知県介護サービス情報センター
介護施設と地域を結ぶ市民の会では、愛知県内の特養ホーム180施設を調査する際に、この「情報の公表」制度を使い、全施設について、基本的な情報は上のホームページからまとめています。
その際に、利用者として使ってみて、非常にわかりにくいという印象を受けました。
また会の会員に、「情報の公表」制度の調査員が数人おり、調査そのものについても改善してほしいという希望がありました。
そこで、提言書としてまとめ、厚生労働省に提出したのが、以下のものです。
------------------------------------------
介護サービス情報の公表制度 についての提言書
平成21年1月15日
内閣総理大臣、厚生労働大臣殿
「介護施設と地域を結ぶ市民の会」代表 山下律子
「介護サービス情報の公表」制度が、平成18年度から始まって3年。調査員として3年間、介護サービス事業所で行われているサービスの内容等を調査し、また利用者として公表されている情報を冊子にまとめるという作業を通して、気がついた点を述べさせていただきます。今後の改善に少しでも役立てば幸いです。
【調査の精度について】
「介護サービス情報の公表」の調査項目は、現在、2人1組の調査員が訪問し、書類をチェックし、目視、聞き取りすることにより行われています。調査が始まって3年になりますが、最も気になるのは、年々、「あり・なし」の判断基準が緩くなり、介護サービス事業者側寄りになっていることです(これは県の研修時の指導や、配布されるQ&Aの内容の変化から感じていることです)。
制度が定着するまで、なによりスムーズな調査→情報公表を優先する意図はわかるのですが、介護サービス事業者が「うちはこれでありと考えている」と強弁する場合、最終責任は介護サービス事業者にあるため、調査員は「あり」と認めざるを得ず、自己評価が厳しく良心的な事業者が「なし」の数が多くなる傾向にあります。また調査時の確認は書類のあり・なしで行い、しかも全員分でなく1件あれば「あり」と判断するため、事業者が調査のために書類のみ整え、実際には行っていないケースも増えてきています。(調査をクリアするためのCDロムも販売されており、事業者の事務所に置いてあるのも見ました)。
以上の傾向から、調査項目の中身については、調査員や事業者により基準に幅があり、それを直ちに利用者が選ぶための評価の基準とすることには無理があると感じています。本来の目的では、調査項目の中身は利用者が事業者の質を評価するための材料とすることにあったと思いますが、現状の調査項目は信頼性に乏しく、客観的な評価の基準とすることは難しいと思います。調査員が訪問調査するにもかかわらず、本当にやっているかどうかはわからない、という実態は、公平・公正と信じて「情報の公表」を見る利用者を裏切るものです。
【利用者から見た使いづらさ】
私ども「介護施設と地域を結ぶ市民の会」は、2000年から利用者が介護施設を選ぶための情報を集め、インターネットで公表するという活動に取り組んできました。しかし、何度電話で情報提供をお願いしても、協力していただけない施設も多く、努力して集められるのは約6割の施設。強制力も公的な後ろ盾もない市民ボランティア活動の限界を感じてきました。それが、2006年に「情報の公表」が介護保険法で義務化され、すべての介護事業所の情報がネット上で公開されることになったのは、大変意義のあることだと歓迎しています。
しかし、いざ利用してみようという時に、非常に利用しにくいこともわかってきました。以下に、利用しにくい理由を列記します。
1. 1事業者ごとの情報が数十ページにおよび、どこをどう見て判断すればいいのかわかりにくい。
2. 調査情報は「書類のある・なし」が掲載されているだけで、実際にどんな取り組みをしているのか、していないのかわからない。
(例)身体拘束について、「している」のか「していない」のか明記されておらず、「該当なし」→身体拘束なし、「身体拘束の記録がある」→身体拘束をしている のように判断せざるを得ない。身体拘束の中身についても、どんな拘束を何件しているかが明記されていないので、悪質なケースかどうかわからない。
3. ホームページでの公表は一覧性という面で利用しにくい。情報弱者である高齢者のために冊子での公表も必要ではないか。
「介護施設と地域を結ぶ市民の会」では、介護サービス情報の公表制度を十分に活用するための試みとして、愛知県内の特別養護老人ホーム180施設について、愛知県の「情報の公表」で公開されている情報を1ページにまとめ、会でのアンケート情報と併せて冊子として発行しました。
(同じ情報は会のHPでも公開しています)
※「情報の公表」をどうまとめたかについては、持参したまとめ冊子またはhttp://www.kaigo-shimin.net/tyousa-ankeito.html
の「施設公開情報」を参照してください。
冊子の反響は大きく、とりわけケアマネジャーから「こんなふうにコンパクトにまとめた冊子がほしかった。持ち歩けて利用者に手にとって見てもらえるので、すごく役に立っている」と好評でした。
【もっと使いやすい制度にするために】
介護サービス情報の公表制度について、以下のことを要望いたします。
1. 県または市町村の単位で、「情報の公表」制度で公開されている介護事業者情報を、1事業者1〜2ページにまとめた冊子を印刷、発行する。
2. 1の財源を確保するため、調査情報も施設の自己申告とし、調査員による訪問調査は廃止する。
3. 公表された情報の信頼性を担保するため、公表内容と実際のサービスが違う場合に情報を寄せる窓口を市町村ごとに設置し、第三者機関が調査に入りチェックする仕組みを作る。
4. 3の調査内容はホームページで公開し、事業者名と調査内容をだれもがいつでも見ることができるようにする。
客観的な情報を公表することは、利用者が適切に介護サービス事業者を選択するために必要ですが、年に1度の調査のみでは、公平・公正な客観性を担保することは難しいと思われます。介護サービスの内容は、日々、利用している利用者やその家族、成年後見人、地域住人などによってチェックすることが、最も効率的で確実でしょう。
上記の理由から、提言で重視したのは、情報公表時の客観性ではなく、公表された情報が実際のサービスと一致しているかどうかを、だれもがチェックでき、指摘することができる仕組み作りです。入り口の情報公表を事業者の自己申告にまかせても、後から本当かどうかをチェックし、そこに調査・指導が入る仕組みが機能していれば、事業者も安易に実際とは違う情報を公表することはできなくなります。
現在の情報の公表制度は、情報公表前に調査員を使い、入り口部分でチェックしようとしていますが、そこに費用を投じても効果があがっているとは思えません。実際の利用者が情報を手にしやすくし、当事者によるチェック機能が働く方向に転換いただけるよう要望いたします。
-------------------------------------------
提言書に対する、厚生労働省の回答は、次のようでした。
○県または市町村の単位で、「情報の公表」制度で公開されている介護事業者情報を、1事業者1〜2ページにまとめた冊子を印刷、発行してほしい
【厚生労働省】利用者それぞれで、必要とする項目が違うため、どのようにまとめるかを行政が統一することはできない。なので、まとめた冊子の印刷・発行は考えていない。
市民が自由に項目を選んでまとめの冊子を出すなど、市民が活用するのは好ましい。
どんどん活用してほしい。
○行政による冊子発行の財源を確保するため、調査情報も施設の自己申告とし、調査員による訪問調査は廃止してはどうか
【厚生労働省】情報を利用する一般市民は、それぞれの介護事業所を訪れて、情報が正しいかどうかをチェックすることはできない。また調査員が事業所に入ることにより、チェックする仕組みになっている。そのため、調査員による訪問調査は不可欠と考える。
それに、調査員の訪問調査がなくなっても、手数料は変わらない。
したがって、冊子発行の財源に振り替えることにはならない。
○公表された情報が実際のサービスと一致しているかどうか、後からのチェックが機能するよう、市町村単位で身近な窓口を設置し、実際と違っていたらそこに連絡し、事業所に調査・指導が入る仕組みを整えて欲しい
【厚生労働省】事後的なチェックとしては、県単位の情報公表センターで、苦情・通報を受け付けている。実際と異なる場合は、情報公表センターが指導することになっているため、今のままで十分機能していると考えている。
○情報の公表制度が始まって3年目だが、ホームページで公開されている情報は、最新のものだけしか表示しておらず、過去の情報は見ることができない。経年変化がわかるよう、過去の分もすべて公開して欲しい
【厚生労働省】入居者の死亡者数など、単年度のみでは客観的な比較ができない項目もあることは理解できる。経年変化をだれもが見られるような形にすることは、これから検討していきたい。
厚生労働省の担当者2人との面談は、予定の30分をこえ、45分となりました。
予定時間をオーバーしても、真剣にこちらの声を聞き、対話に応じてくださった担当者の方に、心から感謝したいと思います。
今回の東京行きで、現場の声を少しでも厚生労働省に伝えることができたのではないかと思っています。
長い報告におつきあいいただきまして、ありがとうございました。
最近のコメント