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いま障害者自立支援法を問う

多くの障がいがある人たちの反対を押し切り、2005年10月に成立した「障害者自立支援法」。
先週金曜日に行われた
「現在(いま)、障害者自立支援法を問う」
と題したシンポジウムと講演会に行ってきました。

高齢者介護についてはそれなりに知っているものの、障害者自立支援法について、正確な知識があるとはいえない状態だったため、勉強のためにと思って参加したのですが、いろいろと考えさせられる内容でした。

主催は「これでいいのか?!障害者(児)福祉〜愛知集会」。
会場の旧・市民会館(金山)中ホールに、約1000人が集まり、「命を守る施策を実現してほしい」という熱気につつまれていました。

午前中にあった第1部のシンポジウムでは、愛知県と名古屋市の担当職員や、障がい当事者と家族、支援する事業所から、それぞれ報告がありました。

中でも、一番強く印象に残ったのが、
実行委員長でもある、市江 由紀子さんの話でした。
市江さんは、寝たまま乗れる電動車椅子で登場。
重い身体障がいがあり、人の手をかりないと命をつなぐことができませんが、20歳の時に自立生活を送りたいと家を出て、ヘルパーの助けを借りながら暮らしている方です。

「自立生活」と書きましたが、障がいのある人たちにとって、「自立」という言葉は、ふだん私たちが使っている意味とは少し違っているかもしれません。
国語辞典では「自立」を、「他の助けや支配なしに自分一人の力で物事を行うこと。ひとりだち」としています。
でも、それでは、他の人の助けや力を借りなければ、暮らしていくことができない障がいのある人たちは、永遠に自立できなくなってしまいます。

市江さんは、こう話します。
「障がい者は、努力して自分で何でもできるようになりなさい、と求められてきました。でも、どんなに努力してもできるようにならない人は、どうしたらいいのだろう。そう思っていたある時、自分がしてほしいことを誰かに頼むことができる、頼む人を見つけることができることが、自立ということなのだと聞いて、はっとしました。自分で何でもできるようになることが自立じゃない。他人の力を借りて、自分らしい生き方を自分で選ぶことが自立なんだと」

障害者自立支援法ができたことによって、この自立の理念がずれてきていることを、市江さんは問題点として指摘しています。
「障害者自立支援法では、私たちの生活に必要不可欠な福祉サービスを“益”だとして、すべての障がい者に応益負担を求めています。でも、生きるために必要な手助けは、“益”なのでしょうか。どんなに努力しても、他人の力を借りなければならない重度の障がい者のことを、本当に考えて作った制度なのでしょうか」

また、介護保険との統合を視野に入れて成立させたという背景のためか、障害者自立支援法では全国一律のチェックシートによる「障害程度区分」と「認定審査会」で、どのくらいのサービスが使えるか「支給上限」を決定することになっていますが、住んでいる市町村によって、同じような障がいを持っていても違いが生じているのだとか。
「私の知人でも、同じような障がいを持っていても、368時間と70時間の支給決定の障がい者がいるのが実態です」と、市江さんは話します。

もう1つ、大きな問題として指摘しているのが、報酬単価の問題です。
サービス提供を行う事業者への報酬が、障害者自立支援法で大きく下がってしまったために、ヘルパーの給料が下がり、スタッフがやめたり、廃止する事業者が出ているというのです。
市江さんは、
「特に重い障がいを持った人を支えるはずの、重度訪問介護の単価が大きく減少し、短時間のサービス提供では採算が合わないと、どの事業所も契約しようとしなくなっています。どれだけのサービスが提供されるか、私たちは身体介護の支給決定の時間数に一番関心を持っていましたが、せっかく300時間と決まっても、契約してくれる事業者がいなければ、サービスは受けられません。今、事業者がやっていけない報酬単価が、一番の問題だと考えています」
と話していました。

報酬(給料)が安いために、職員がやめてしまうというのは、今や介護の世界でも問題が表面化してきています。
特養ホームをまわって聞くのは、
「いくら求人を出しても、人がこない。このままでは、介護の仕事をする人がいなくなってしまう」
という現場からの悲痛な声です。

シンポジウムでは、
「報酬単価が安いのは、障がい者への蔑視から生じているのではないか」
と、日本障害者協議会常務理事の藤井克徳氏が指摘していましたが、
「役に立たない人間達に金を使うのはもったいないという思いもあるかもしれませんが、それよりも家事や身体介助をするヘルパーという仕事に対する評価が低すぎるのではないか」
という市江さんの指摘の方が、正解に近いような気がします。

高齢者の介護も、障がい者への手助けも、介護保険ができるまでは、家族が無償でやるものだとされていました。
市江さんが自立生活をするために、家を出た頃は、介護ヘルパーという仕事がまだ一般的ではなく、無償のボランティアの人たちの手で、生活を支えてもらっていたと言います。

介護の仕事は、家族が行っていた、アンペイドワーク(無償労働)だったから、報酬が安い(きちんと専門性が評価されていない)のだと思います。

障害者自立支援法の問題点はいくつもありますが、そこで提起される問題には、高齢者介護で見過ごされてきた人間の尊厳に関する大切な問題が含まれています。
高齢者の問題は、なかなか当事者が声を上げることは少ないのですが、障がいのある人たちは、命の問題として、仲間で力を合わせて政治にもの申しています。
「こんな制度はおかしい!」と、きちんと声を上げる姿勢は、学ぶところが多いものでした。

東郷町の障がい者施策についても、これから問題を検証して、当事者の方や家族と共に改善していきたいと、思いを新たにしました。

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