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介護施設での虐待防止

昨日、報告した看護・介護実践セミナー「高齢者の身体拘束廃止と虐待防止」の続きです。

今日は、介護施設での高齢者虐待防止について、講演内容を報告します。
引き続き、講師は田中とも江先生です。

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高齢者虐待とは、
65歳以上の高齢者に対する「養護者(家族など)」および「養介護施設従事者等」による次のような行為を言います。

○身体的虐待
平手打ちにする。
つねる。
なぐる、蹴る。
ベッドに縛る。
無理にスプーンを口につっこむなど、食事を詰める。

○養護を著しく怠ること(ネグレクト)
髪の毛が伸び放題。
脱水症状、栄養失調。
劣悪な住環境。
入浴できず異臭がする。

○心理的虐待
排泄の失敗を嘲笑。
恥をかかせる。
怒鳴る、ののしる。侮辱する。
無視する。

○性的虐待
性器への接触。
キス。
排泄の失敗に対して、裸にして放置する。

○経済的虐待
日常生活に必要な金銭を渡さない。
年金や預貯金を使用する。
本人の自宅等を無断で売却する。

日常の食事介助で、食がすすまない人・食べられない人に対して、口を開けさせて無理矢理、食事を詰め込むのは、身体的虐待にあたります。
スプーンでの食事介助で、食べてもらいたいあまり、口を少しでも開けたらスプーンで食事を入れている人はいませんか。
食べられない・食べないのには、必ず理由があります。
きざみ食やミキサー食がいやで、食べられないのかもしれません。
おいしく、飲み込みやすいソフト食に切り替えるなど、食事の工夫をせずに、無理矢理食べさせていないか、考えてみてください。

ネグレクトにあたる「脱水症状」は、施設ではけっこう多く見られます。
1日に水分を700〜800ccしかとっていない方は、脱水です。
脱水症状をおこしているお年寄りは、肌がカサカサで、白い粉をふいています。
こうした皮膚の状態では、かゆみがでて、手でばりかいてしまい、ミトンなどの身体拘束につながっていきます。
また脱水症状から、認知症に近い状態になることもあります。
高齢者に脱水は禁物ですから、1日に1500ccは摂取するように気をつけてください。

心理的虐待で多いのは、「無視」ですね。
忙しいから「後でね」といってそのまま忘れてしまったり、入所者に「早くして」とせかすようなことを言うのも、虐待にあたります。
カーテン越しに排泄をさせるのも、心理的虐待だと思います。

高齢者の権利擁護を守るためには、
身体拘束や虐待をしない。
自尊心を傷つけない。
自己決定を尊重する。

が大切です。

私たちはプロの介護・看護者です。
プロである以上、家庭での介護を超えてあたりまえ。
そのためには、
ケアの仕事を、単なる業務だと考えないでほしいのです。
私たちに、生命を、人生を、預けた人に、どう幸せになってもらうのか。
それを心に刻んで、毎日の仕事にあたってほしいと願って、話を終わります。

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高齢者虐待は、家庭で起こることが多いと思われていますが、介護施設でもおこっています。
私は施設の職員から、
「認知症のお年寄りの背中に、“わたしはバカです”と書いた紙を貼って、笑いものにした」
「職員がお年寄りの顔をなぐり、あざができた」
などの虐待事例を聞いたことがあります。

田中先生が指摘するように、「スプーンで食事を口に詰め込む」「入所者を無視する」「早くしてとせかす」なども虐待だと定義されるのであれば、ほとんどの施設で虐待が行われているということになるのではと思ってしまいます。

それでも、介護施設ですべてのお年寄りが幸せに暮らせるようになるためには、
ちょっとした虐待も、なくしていかなければならないでしょう。

全国でもいい施設として有名な特養ホームの職員さんが、こんなことを言っていました。
「ぼくたちは、おむつの交換屋じゃない。
お年寄りの幸せをつくる仕事なんだ」

と。
そう胸を張って言えるような、プロの介護職が増えることを、私も願っています。

そして、
私たち市民も、施設に要求するだけでなく、
ボランティアなどいろいろな立場から、施設で暮らすお年寄りの幸せづくりのお手伝いに、もっと手を貸していかなければ!
そうでなければ、自分が望む老後はやってこないと考えています。

地域(住民)と施設がともに手を取り合って、たとえ年を取って介護が必要になっても、安心して幸せに暮らせるように支えていく。
そんな取り組みをすすめていきたいと思っています。

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