ボランティアの訪問調査で、長久手町の特養ホーム「愛知たいようの杜」に出かけた。
5年ぶりに訪れた「たいようの杜」は、ずいぶん変貌を遂げていた。
まず、森の中にあったのが、宅地化と新たな道路ができたせいで、まちのはずれのイメージから、住宅地に密接した場所へと変わっていたのに驚いた。
創設者の吉田一平さんがこだわっていた舗装されていない「でこぼこ道」は、なくなっていた。
特養ホームとしての「たいようの杜」は、4人部屋中心の従来型特養。
2004年に全室個室・ユニットケアの新型特養ホームができ、特養にもユニットケアの考えが入ってきたことで、特養ホームに大きな変化の波がおきた。
少ない職員で介護ができる効率の良い集団処遇から、利用者主体の個別ケアへ。
個別ケアを実現するための手段として出てきたのが、「ユニットケア」だ。
少人数を単位にしたグループに区切り、担当職員と入居者の距離を縮めて、一人ひとりの顔が見えるようにした個別ケアだ。
たいようの杜は、部屋こそ4人部屋だが、ケアには20人を単位としたグループケアを取り入れていた。
建物も改築し、グループごとに日中過ごしたり食事をしたりするリビング空間を増築。
その意図について、山口施設長さんは、
「80人が食事をとる大食堂では、なかなか落ち着けず、くつろいで過ごせませんでしたから。20人が食事をする小さな食堂に、水場、ソファーやテレビなどを備えた空間を4つ作り、思い思いに過ごせるようにしました」
と話す。
またところどころに暖炉や昔の古い家具、図書コーナーなどが設けられ、生活感のある落ち着いた空間が生まれていた。
これは5年前からだが、カーテンで仕切られた4人部屋には、仏壇などの私物がぎっしり。
犬やうさぎ、烏骨鶏などの動物たちがいるのも変わらない風景だ。
25ある個室はすべて、ショートステイ用。
食堂・リビングも、ショートステイ専用の空間が設けられており、これなら施設に慣れないお年寄りのお泊まりでも、かなり過ごしやすそうだった。
20人に介護の単位を区切ったことで、個別の希望への対応もいっそう進み、毎日のように昼間だけ自宅に帰って家族と過ごし、夕方、職員のお迎えで特養に帰ってくる人。墓参りにつれていってもらう人など、個別の外出支援も職員が実費(ガソリン代)で行っている。
訪れた日は、昼食に炭火で焼いたサンマを食べるのだと、職員が中庭でバーベキューコンロで炭をおこし、大量のサンマを焼くそばを、麦わら帽子をかぶった車いすのお年寄りが楽しげに囲んでいた。
再来年には、いよいよ全室個室・ユニットを40人分、増築する予定とのこと。
増築で個室に移動した人が入っていた4人部屋も、改装して個室対応していきたいと、施設長は話していた。
また別に、地域密着型の29人までの特養ホーム+10人のショートステイ+グループホームを、ござらっせの近くに建てる計画もあるのだそうだ。
従来型の4人部屋特養ホームは、個室・ユニット型に改築される動きが、これから進んでいくのだろう。
たいようの杜は、その動きの先頭を切る形で、急速に変わり始めている。
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