
自らアルコール中毒患者に扮し、精神病院に潜入して『ルポ・精神病棟』を書いた大熊一夫さんの最新刊です。
『ルポ・精神病棟』を書いたのは、1970年のこと。
それから39年たって、「解決編」として書きあげたという本書は、「精神病院を解体して重い精神病の人々も病院を使わずに支える」という仕組みを作り上げたイタリアのトリエステを紹介。
精神病で苦しむ人を精神病院に閉じこめるのではなく、地域であたりまえの生活をすることを応援する支援体制をとることで支えていこうという試みを日本でも根付かせたいという熱い思いが伝わってきます。
実はこの本は、「イタリア精神保健改革の父」バザリアの名を冠した第1回バザリア学術賞を大熊さんが受賞したことがきっかけで生まれたもの。
バザリア学術賞はバザリアの業績についての調査研究を助成するのが目的で設けられたもので、大熊さんが応募し賞金2万ユーロ(約350万円)が送られたとのこと。
この賞金を取材費にあてて、完成・出版したのが、『精神病院を捨てたイタリア 捨てない日本』(岩波書店/2400円)です。
バザリア学術賞を大熊さんが受賞した時の記事が、インターネットメディアJANJANにあったので、紹介しますね。
------------------------(ここから抜粋引用です)---------------------
イタリアの第1回バザリア学術賞が『ルポ・精神病棟』の著者、大熊一夫氏に
http://www.news.janjan.jp/culture/0806/0806250512/1.php
「イタリア精神保健改革の父」と称えられる精神科医、フランコ・バザリアの名を冠した「バザリア学術賞」の第1回受賞者に、『ルポ・精神病棟』で知られる日本人ジャーナリスト、大熊一夫氏が選ばれた。
バザリアは半世紀も前に「精神病院は治療に不適切」と主張、イタリアでの精神病治療に大きな足跡を残した。
フランコ・バザリア(1924年生まれ、1980年没)は、イタリアの精神保健改革の先駆者といわれる精神科医。
「精神病院は治療に極めて不適格」と今から半世紀も前に主張した。
彼の業績を記念したフランコ・バザリア財団(出資はバザリアの生まれ故郷ヴェネチア県)は、昨年「バザリア学術賞」を創設し、世界から受賞者を公募した。
この賞は、「申請者の国において申請者の国の言葉で出版する」ことを条件に、バザリアの業績についての調査研究を助成するのが目的。
大熊一夫氏は、これに応募し、米国のイェール大学、バークレイ大学、オーストラリアのウオロンゴング大学等の研究チームと競って、単独応募で第1回の受賞者に選ばれた。
財団のイタリア人審査委員会は、大熊氏の申請書から先進国の中で日本だけが極端な精神病院中心主義なのを知って、イタリアの精神保健改革に関する本を日本で出版する意義は大きい、と判断した。
同氏が38年前に書いた『ルポ・精神病棟』(朝日新聞社刊)が累積約30万部出版されたこと、過去20年間、幾度か改革の中心地トリエステなどを訪問して新聞や雑誌等に記事を書き、その記事がもとでトリエステを訪れた日本人が1,000人を超えたことなども勘案され、審査委員の全員一致で選ばれた。
大熊氏によると、イタリアは単科精神病院をなくした世界唯一の国とのこと。
精神病院廃止を決めた180号法は「バザリア法」と呼ばれ、1978年5月に施行された。
改革が始まって、今年でちょうど30年になる。
かつて約12万人を収容した「マニコミオ」と呼ばれる公立単科精神病院は、1998年末でイタリアからなくなった。イタリアの人口は約5,600万で、日本のほぼ半分だから、日本に置き換えれば日本の精神病棟の24万床が日本社会から消えたことになる。因みに、現在の日本の精神病棟は約34万床だ。
大熊氏によると、イタリアの特色は、精神病院を廃止した後、治療する場の軸足が精神保健センターに移った点。
診療・往診は当然のこと、人間関係の修復・住居の確保・就職斡旋・楽しみの開発など、「当事者の人生丸ごとを視野に入れた支援」だ。
重い精神病の人々も病院を使わずに支える、というポリシーが見どころ。改革の中心はバザリアが働いていたトリエステだが、今世紀にはいって、改革はイタリア全土に広がる勢いだ。
三井マリ子2008/06/26
---------------------------(引用ここまでです)------------------------
大熊一夫さんの『ルポ・精神病棟』を初めて読んだ時の衝撃が、わたしがルポライターになろうと思った原点になっています。
そんな大熊さんが、ずっと追ってきた精神病院問題の解決編として出した本。
注文していたのが、今日届いたのですが、風邪で1日家にじっとしていたこともあって、一気に読みました。
当事者の力を信じ、なにをしてほしいかを真摯に聞く。
日本の精神病院をめぐる問題を解決する鍵は、それに尽きるように思います。
大熊一夫さんのホームページは
http://okumakazuo.com/
こちらも、ぜひ覗いてみてください。
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